若手の部下に覇気や主体性のなさを感じている上司は多いのではないでしょうか。しかしもっとガンガン仕事に取り組んでほしいという上司の想いは、どうも空回りしがちです。どうして空回りしてしまうのか。その理由と対策について考えてみました。
- 主体性のある人がほしい企業
- 数字目標だけは若手は動かない
- 2つの対策と1つの諦め
主体性のある人がほしい企業
日本経済団体連合会が2018年に発表したアンケート調査によれば、企業が学生に求める資質や能力のトップは「主体性」でした。同団体の2011年のアンケートでも、「最近の大学生に不足している素養」について、企業の89.1%が「主体性」をあげているのです。これは「コミュニケーション能力」「実行力」を抑えてのトップでした。
指示待ちだけの人材では仕事が回らなくなってきているのに、主体的にビジネスに取り組む若手が激減しているようなのです。
また、仕事に取り組むためのモチベーションでさえ、これまでのような形では刺激できないといった状況でもあります。
産業能率大学総合研究所の「2019年度新入社員の会社生活調査」によれば、会社での地位に「関心がない」と答えた人の割合は、42.7%に達しました。責任ばかりが増えて、ライフワークバランスも崩れてしまうような出世に、多くの若者が魅力を感じていないのではないでしょうか。
仕事は厳しいかもしれないけれど、我慢すれば出世するし、給料だって上がる。そんな価値観を若手は共有してくれません。
数字目標だけは若手は動かない
こうした若手の心理について、小原和啓氏は次のように述べています。
「良質な人間関係」や「意味合い」を重視する人が非常に多いのが特徴です。仕事よりも、個人や友人との時間が大事。何気ない作業の中にも、〝今、自分がこの作業をやっている意味〟を見出せないと、とたんにやる気が起きなくなる。「没頭」タイプの人も多く、「いくら稼げるか」よりも「仕事に夢中になって時間を忘れてしまった」ということに喜びを感じます。
数字の成果よりも当人や社会にとっての意義が重要視されると、現在の会社の仕事の多くは存在意義を失ってしまうかもしれません。
実際、若者たちを集めたワークショップで、次のような会社への不満が示されたと、高橋克徳氏は「若手の『出世したくない』症候群が、ただの責任逃れではない理由」(ダイヤモンドオンライン)に書いています。
「なぜ、ビジョンと言っているのに示されるのは数字だけなのか」
「なぜ、成長ありきなのか、なんのための成長なのか」
「なぜ、上司は上から目線で、上司が正しいことが前提なのか」
どうでしょうか?
ここに示されたのは、会社という存在そのものに対する疑問ばかりです。とはいえ仕事を主体的に取り組んでもらうためには、こうした若手の疑問に答える必要が出てくるでしょう。利益だけではない仕事の社会的な理由を説明できることが、上司の役割の一つになったといえそうです。
2つの対策と1つの諦め
では、こうした若手が「主体的に」仕事をするために、上司はどんなことができるでしょうか?
①仕事の意義をしっかり説明する
仕事として成立している以上、あらゆる仕事には社会的な意義があります。喜んでくれる顧客がいるからこそ商品やサービスが買われていくのですから。そうした意義をしっかりと説明できるようにすることが大切でしょう。儲かるだけではない仕事の意味を、自身でもしっかりと考えてみましょう。
②若手社員の興味対象と仕事を繋げるよう努力してみる
若手社員が夢中になれるように、どんなことをしたいのかを聴き込み、現在の仕事と繋げてみましょう。こんな技術が身につくといったキャリア的な観点から仕事を捉え直してみたりすのも、一つの方法でしょう。
もちろん仕事は最低限こなせばいいといった意識で働き続ける若手社員もいることでしょう。そうしたスタンスを認めていくことも必要なのかもしれません。
仕事を優先順位の一番にする必要は必ずしもないのですから!
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参考:『モチベーション革命』(小原和啓 著/幻冬者)/「若手の『出世したくない』症候群が、ただの責任逃れではない理由」(高橋克徳 著/ダイヤモンドオンライン)