ほめられれば誰も嬉しいもの。ただ、ほめるのもけっこう難しいものです。上司だとゴマすりみたいになるし、部下だと機嫌を取っているように見えることも。そこで「ほめ上手」になるテクニックをお伝えします。
おすすめしたい4つのテクニック
自然にほめるのは、案外難しいものです。本当にすごいと思っていても、口に出すのは恥ずかしかったり、何となくウソっぽくなってしまったり……。結果的に効果的にほめ言葉をつかえないケースが少なくありません。
ただほめることの心理的効果については、けっこう心理学で研究されています。そこで心理学で証明されているほめ方を、紹介していきましょう。
①人づてにほめる
ほめるタイミングがつかめない人におすすめしたいのが、第三者を通じてほめるようにすることです。これは心理学で「ウィンザー効果」と言われています。
大人数の前でほめられたりすることが苦手な人もいますし、面と向かってほめられるとお世辞と思われる可能性もあります。ところが親しい友人などから、「そういえば、〇〇のことを部長が『いい仕事するな』ってほめてたよ」など言われると一気に信憑性が高まるのです。
タイミングよくほめる必要がないのも、「ほめ下手」の人にとっては好都合でしょう。重要なのは、自分のほめ言葉を伝えてくれる人をしっかり見極めることでしょう。ライバル心などから伝えてくれないのは困りますし、変に曲解されて伝わるのはもっと困ります。
人さえ間違わなければ、何かの機会に「そういえば」とちょっとしたエピソードとともにほめ言葉を伝えればいいのです。これまであまり人をほめたことがないな、と思う人は、こんな方法でほめてみてはいかがでしょうか?
②期待の言葉と一緒にほめる
米国の心理学者ロバート・ローゼンタールは、成績をほめた子どもはより成績が上がり、叱った子どもは成績が下がることを発見しました。こうした現象は「ピグマリオン効果」と呼ばれています。
この心理の重要なポイントは「期待」です。
そして「ピグマリオン効果」が発見されたのは、ネズミを使った心理実験でした。
利口なネズミと学生に伝えた場合と、頭の悪いネズミだと伝えた場合を比べると、利口だと伝えられたネズミの方が早く迷路を解いたという実験結果が得られたのです。このことから期待することで、結果が違ってくるのではないかという推論が生まれたそうです。
この心理的効果を使いたいならば、「ほめる」+「期待」を伝えるといいでしょう。「この前のプレゼンは具体的で素晴らしかった。今度も頼んだよ」といった形でのほめ言葉は、部下をほめるときには使いやすいでしょう。
また期待したい事柄が出たとき、一緒にほめ言葉を伝えればいいので、口にもしやすいでしょう。
③隠れた長所をほめる
これは人間観察が必要ですが、隠れた長所をほめると、ほめられた人は非常に喜ぶのだそうです。
例えば、大雑把に見えるのに準備は入念にしているといった人には、「準備とかすごく丁寧で勉強になります」といった言葉は刺さるでしょう。第一印象と違う長所がないのか、しっかりと観察してみましょう。
また目立ちがちな短所を、ひっくり返してみるという方法もあります。「神経質な」人は「しっかりとした」人物でしょうし、無計画な人は「大胆な」人物かもしれません。
相手の長所を見つけようと、じっくり観察すること自体が人間関係にプラスに働くこともあるでしょう。難易度は高めですがおすすめです。
④無能な上司は頼ってほめる
ほめられるとモチベーションが上がりますよね。これは「エンハンシング効果」と呼ばれるものです。やる気の失せた上司に頑張ってもらうためには、多少わざとらしくてもほめてみるというのも方法でしょう。
ただほめるだけで仕事をバリバリこなすようになるのは、やや難しいかもしれません。そんなときは頼ってみましょう。注目されたり、特別扱いを受けると能力を発揮するという「ホーソン効果」で、これまでにない実力を発揮する可能性があるからです。
2つの効果で仕事がうまくいけば、上司にとっても、その下で働く部下にとってもプラスでしょう。試してみる価値はあるかもしれませんよ。
心理学を使っての対人関係改善に興味のある方は、こちらもご覧ください。
参考:『一流の人はなぜモノの言い方にこだわるのか?』(齊藤勇/宝島社)