肌に触れることの大切さを知っていますか?タッチングは幸福感を生み出すだけではなく、励ましや親しくなるきっかけにもなります。タッチングの効果を活用方法とともに紹介します。
- 接触で相手の心を推し量る
- 信頼関係を構築する神経伝達物資の分泌レベルに影響
- 夫婦が仲良くなれる過ごせるポイントに
- 握手は好感度を上げ、マイナスな気持ちを抑える効果
接触で相手の心を推し量る
親が子どもに触れることが大切なのは広く知られています。しかし、近年の研究により、他人の肌に触れる行為が大人にとっても重要な役割を果たしていることがわってきました。
そもそも人はゆっくり触れることで愛情を表現します。ドイツの心理学者クロイのグループは、人が「人工の腕」「恋人の腕」「赤ちゃん」を触ることのスピードを計測しました。すると人口の腕を触る速度は、19センチメートル/秒だったそうです。ところが恋人や赤ちゃんのに触れた場合の速度は、その役半分となるのを発見しました。
実際、自然にゆっくり触ることは、幸福感をもたらすだけではなく、「メンタライジング」と呼ばれる相手の心を推し量る活動も行われていることが、脳の活動領域の調査からわかりました。
このタッチがどのような意味を持つのかを推測する機能が働くことから、望みもしない性的な接触への嫌悪感を発動することもあるそうです。つまり同じように触られても、相手が励ますために触ってくるのか、癒すために触るのか、あるいは性的に触っているのかを、瞬時に判断する能力が人間には備わっているというわけです。
信頼関係を構築する神経伝達物資の分泌レベルに影響
恋人が久しぶりに再開したときや、スポーツ選手が試合に勝ったときに抱き合って喜ぶことがあります。これは触れることで、喜びや悲しみを共有しようとする無意識な行為だそうです。(『皮膚感覚から生まれる幸福』山口創 著/春秋社))
触れることで共振して同期するという働きは、「ポジティブ・リゾナンス」と呼ばれています。良好な人間関係のときに出され、相手への信頼とも関係ある神経伝達物質「オキシトシン」の分泌レベルが、「ポジティブ・リゾナンス」のときには互いに似てくることもわかっています。
こうした触れることで起きる効果を、親子では特に活用しているそうです。そのため抱っこの時間が少ないと、チックや暴力、摂食障害などの心の問題が起きやすい傾向があると、児童精神科も発表していると、『皮膚感覚から生まれる幸福』(山口創 著/春秋社)には書いてあります。
夫婦が仲良くなれる過ごせるポイントに
では、このようなタッチングは夫婦間にどのような影響をもたらすのでしょうか?
2013年に旭化成ホームプロダクツ株式会社がアンケート調査したところによれば、30~50代の既婚カップル207組で「手をつなぐ習慣がありますか?」という質問に、「ある」と回答したカップルの96%が、自分たちを「いい夫婦」と認識していることがわかったのです。さらにそう回答したカップルの95%の妻が「妻として幸せ」だと感じていることもわかったのです。
つまり夫婦関係がうまくいっているコツの一つが手をつなぐことだったのです。
握手は好感度を上げ、マイナスな気持ちを抑える効果
では、タッチングはビジネスではどのように働くのでしょうか?
マサチューセッツ工科大学のドルコス氏は、握手をすると交渉について肯定的な印象を持つことがわかりました。
「特に交渉後に相手がポジティブな反応を示す場合、握手することでその影響がより大きくなった。そして逆に交渉後に相手がネガティブな反応を示した場合にも、交渉前に握手をしていると、そのネガティブな影響を小さくすることもわかった」と『皮膚感覚から生まれる幸福』(山口創 著/春秋社)
には書いてあります。
つまり握手はビジネスにプラスに働くだけではなく、マイナスを抑える効果もあることがわかっているのです。
このような身体接触の効果は、通行人に署名をお願いするときでも、相手の腕にタッチしない場合は55%しか署名してくれなかったのに、タッチした場合は81%も許可したと実験結果もあるそうです。
つまりビジネスでの握手は、かなり効果があるのです。日本人は握手の習慣はありませんが、握手を求めれば断れることも少なくないでしょう。さすがに名刺交換とともに握手するのは難しいですが、気分がほぐれた後なら、「ビジネスの成功を祈って握手しましょう」と笑いながら手を差し出せば、あまり拒まれることがないかもしれません。
セクハラなどにならないよう十分に注意する必要がありますが、握手の効果はぜひ活用すべきでしょう。
参考:
『皮膚感覚から生まれる幸福』(山口創 著/春秋社)