仲間外れは辛いものですよね。仲間外れについては、脳科学の観点からも研究が行われています。どうして他者を排除するのかについて説明していきましょう。
- 仲間外れは本当に痛みを感じていた
- 進化の過程で仲間外れが起こった
- 少数派に注目してしまう心理
- 少数派のイメージは誇張されやすい
仲間外れは本当に痛みを感じていた
『あなたの脳のはなし』(デイヴィッド・イーグルマン 著/早川書房)には、「仲間外れ」を脳がどう認識するのかが説明されています。
実験では3人でボール投げをしていて、突然1人だけ無視されて、2人だけでボール投げを始めると、脳の痛みを感じる領域が活性化していることがわかったそうです。
この研究結果により、集団から疎外されることの辛さは、人が生まれ持っている機能だということもわかりました。すでにチンパンジーなどでも仲間外れが報告されているので、この問題は生物にとってけっこう根の深い問題なのかもしれません。
進化の過程で仲間外れが起こった
人間が進化の過程で集団をつくるよう進化していくなかで、仲間外れも起こったと考えられているそうです。集団で協力しあえれば食糧確保も容易になり、安定した生活もしやすくなります。その一方で、集団が結束を高めるために、外集団と自分たちとの差別化を行うようになり、その結果、集団ごとの闘争も多くなってしまうことになったのです。
しかも集団の結束を高めるための基準は、とてもあいまいです。子どものいじめの対象が次々と変わっていくのも、いじめの基準となるようなものが簡単に変わっていくことを示しています。それでもいじめられた本人は、冒頭の研究結果のように痛みを感じ、本当は根拠がないのにいじめられるのは自分が悪いと思いがちなのだそうです。
少数派に注目してしまう心理
当たり前のことですが、基本的に仲間外れは少数派に対して起こります。そして少数派が、集団でどのように認識されているのかといった研究も行われています。
心理学者のハミルトンは、「サム Aグループ 地域で子供のためのボランティアをしている」「マイク Bグループ 怒りにまかせて隣家の柵を壊した」といったように、個人の情報が書かれたスライドを作りました。
その上で、A・B両グループとも「好意的なコメントがついた人物」と「批判的なコメントがついた人物」が同じ割合になるように振り分けました。
スライド全体の枚数では、Aグループを多く、Bグループを少なくし、両グループとも好意的なコメントのついたスライドを多くみせたのです。
これらのスライドをランダムに実験参加者に見せて、どちらのグループに悪い印象を持ったのか調べたところ、Bグループだとわかりました。これは全体の中で数の少ない「Bグループ」の「批判的なコメント」が目立ったためだでした。
一方、AグループよりBグループのスライド数が少ないままに、両グループとも批判的なコメントを増やすと、Bグループの方に好感を抱いた人が多くなったのです。これは数の少ない「Bグループ」の「好意的なコメント」に注目が集まったために起こったと解釈されています。
少数派のイメージは誇張されやすい
このほかにも少数派のイメージや特徴は誇張されやすいことも判明されています。つまり少人派は、そもそも目立ちやすい存在であり、特徴が誇張されやすいこともあって、仲間はずれに発展しやすいのです。
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しかし少人派は注目して誇張したイメージを抱きやすいのは、心理的な傾向に影響されたものであり、必ずしも実態と同じとは限らないことも知っておくべきでしょう。
近年、多様性という意味の「ダイバーシティ」という言葉に注目が集まっています。ビジネス環境の変化に柔軟に素早く対応できるともいわれており、多様性が企業の生き残りのポイントの一つにもなりそうです。
一人一人が多様性を受け入れていくためには、少数派に対する偏見を抱きやすいといった人が持つ傾向性を理解することが大切なのではないでしょうか。
参考:
『あなたの脳のはなし』(デイヴィッド・イーグルマン 著/早川書房)
『本当は怖い59の心理実験』(おもしろ心理学会 編/青春出版)