ビジネスマンであれば、相手に名前を覚えてもらうのが早ければ早いほど有利ですよね。そのために、頻繁に訪問や電話をしたり、身だしなみを整えてよい印象を与えたりと、並々ならない努力をしている人も多いはず。でも、名前を覚えてもらうなら、名刺一枚工夫すればいいとしたらどうでしょうか。相手の頭の中に、あなたの名前を簡単にプリントしてしまう方法がありますよ。
- シンプル名刺が流行っているけれど……
- 「読みづらい文字のほうが印象に残る」を実証した心理実験
- 独特文字はよくある名前の人にこそ有効!
- 住所やメールアドレスは既存フォントを使って
シンプル名刺が流行っているけれど……
世の中、「シンプル」全盛期ですよね。シンプルな暮らしに似合う、装飾を極限までそぎ落としたデザインの家具や什器、文房具、食器などが氾濫し、「気づけば白無地のものばかり揃えていた」という経験を持つ人も少なくないでしょう。
その傾向は名刺にもあらわれています。余白の多い紙面に、読みやすい小さめのフォントで名前が記された名刺をもらうと、洗練された印象を持ちますよね。シンプルな名刺は自分でデザインするのもカンタンですが、よほど高度にデザインされたものでなければ、名前が印象に残りづらいというデメリットがあります。これはビジネスマンにとって由々しき事態です。
そもそも、あなたが名刺を渡す目的は、スタイリッシュで洗練された印象を相手に残すことでしょうか? いいえ、名前を早く覚えてもらって、ビジネスにつなげたい。それが本音ですよね。洗練された名刺でなければ仕事が来ないデザイナー関連ならまだしも、そうでないなら、名刺はとことん印象づけたほうが得です。
かといって、派手な名刺やあまりにゴチャゴチャした名刺は、紙面の印象だけが強烈に残って、なかなか名前を覚えてもらえないかもしれません。大丈夫、悩むあなたに最適な方法があります。
「読みづらい文字のほうが印象に残る」を実証した心理実験
人は、読みづらい文字のほうが記憶に残るということを実証した心理実験があります。2011年に学術誌『コグニション』へ掲載された実験です。知的レベルが同程度の被験者たちに、あるエイリアンの特徴について書かれた文章を暗記してもらい、あとで記憶テストを行いました。
すると、ごく一般的なフォントで書かれた文章を暗記してもらったグループよりも、普段あまり接しないような読みづらいフォントで書かれた文章を暗記してもらったグループのほうが、正答率が10パーセント以上もアップしたのです。
つまり、ものを覚える際には、その内容と同様に書かれた文字のフォントも重要な意味を持つということになります。読みに苦労する方が、よりインプットの深度が高まると考えられるのです。これを、名刺に応用することはできないでしょうか。
独特文字はよくある名前の人にこそ有効!
もっとも、「自分の名前は特徴的だから、すぐに覚えてもらえるよ」という人には関係のない話でしょう。フォントではなく名前が読みづらいので、それだけで相手がインプットしやすくなるからです。逆に佐藤さん、田中さん、鈴木さんといった、よくある名前すぎて覚えてもらえない!と悩む人にこそ、独特なフォントで名刺をつくるのは有効でしょう。
自分で名刺をつくるときは、名前のフォントにこだわってみましょう。ちょっと見ないような珍しいフォントを使えば、印象に残りやすいですし、話のタネにも使えます。数種類のフォントで名刺を作ってみて、「どの名刺の名前が覚えられやすいか」カウントをとってみるのも面白そうですね。
住所やメールアドレスは既存フォントを使って
名刺に独特のフォントを使うときには、注意点があります。それは、珍しいフォントを使うのは名前だけにして、他の要素は既存の見やすいフォントを使うことです。とくに、メールアドレスに独特フォントを使うのは危ないかもしれません。「ここの文字は0(ゼロ)? それともO(オー)?」などと相手が迷ってしまいます。
情報を正しく伝えるためには、あくまで読みやすく、がビジネスマナーです。冒険は、名前のフォントだけにしておきましょう。もちろん写真のような象形文字などを使ってはいけません!
参考:『脳がシビれる心理学』