第一印象が大切だとよく言われますが、人はどれぐらいの時間で他人を判断するのでしょうか?第一印象が作られる時間に関する研究と、その第一印象を良い方に誘導する方法論について解説します。
- 30秒どころではない判断時間
- 2秒で見抜かれる「本質」だけは磨いておきたい
- 人物評価を一変させる事前情報
- 初対面で「温かな」人物だと思わせる
30秒どころではない判断時間
第一印象で何となく合わないと思ったら、やっぱり……。なんて思うことありませんか?根拠すら明確ではないものの、それなりに当たってしまうのが第一印象です。
では、第一印象は、どれぐらいの時間で作られるのでしょうか?
スタンフォード大学のアンバディ教授の実験データは、かなり衝撃的なものでした。
彼女は大学で講義の準備をしている教員の様子を撮影、30秒間の音なし映像にして実験参加者に見せました。その映像の鑑賞後に、動画に映っている教員を評価してもらったのです。
その後、動画に映っていた先生の講義を半年間受講させ、受講後また同じ映像を見せ、半年前に実施したものと同じテストで先生を評価してもらいました。
結果、「受け入れやすさ、活気、自信、情熱、楽観さ、プロらしさ、温かさ」の全体的評定値が、2つのテストでかなり近い数値を示したのです。つまりわずか30秒の無音の動画でも、ある分野では半年間の講義を受けた後と同じような評価を下すことができたのです。
この実験は高校生を対象にも実施しましたが、結果は同様でした。しかも動画の長さを、15秒、6秒、2秒と短くしていっても、やはり半年後の評価と同じような結果を得ることができたのです。
この実験結果から、わずか2秒で多くの学生が先生の本質をかなり見抜いていたことがわかりました。もちろん第一印象が常に当たるわけではありません。ただ、2秒でかなりの部分を見抜かれるとは、覚えておいた方がいいでしょう。
2秒で見抜かれる「本質」だけは磨いておきたい
わずか2秒で自身の本質が見えてしまうなら、第一印象だけをよくしようとしても仕方がありません。少なくとも30秒の映像と半年の講義の後のテストで点数が近かった「受け入れやすさ、活気、自信、情熱、楽観さ、プロらしさ、温かさ」については、本質を見抜かれても大丈夫なように日ごろから自分を磨いておきたいものです。
この部分は、実際にかかわりあいを持つようになった後も、評価を挽回しにくい項目だからです。
営業マンであれば、お客さんに「受け入れやすさ、活気、自信、情熱、楽観さ、プロさ、温かさ」が一瞬で見抜かれているという危機感を持つべきでしょう。プロっぽい言葉を並べればどうにかなるといった甘い見通しは、捨てたほうがいいかもしれません。
人物評価を一変させる事前情報
それでも第一印象に自信がないという方に紹介したいのが、心理学者のケリーの実験結果です。
ケリーは男子大学生に実験に参加してもらい、講義を担当する先生の紹介文を渡します。先生が来る前に目を通しておくように指示が出されるのですが、グループによって2種類の異なった紹介文が用意されていました。
その1つを書いておきましょう。
「○○先生はマサチューセッツ工科大学の経済社会学部の卒業生であり、他の大学で3学期間心理学を教えてきました。ここで教えるのはこの学期が初めてです。彼は26歳で兵役を終えており、結婚しています。彼を知る人は彼がいささか冷たく、勤勉で、批判的で、実際的で決断力のある人物だとみなしています」
この「彼がいささか冷たく」という言葉が、もう1つの紹介文では「非常に温かく」と書かれていました。
結果、講義が終わってから実験参加者に先生の評価をお願いすると、「温かく」と紹介された実験参加者の方が、「冷たい」と紹介したグループより先生の好ましいと評価していたのです。
「冷たく」と目立った差が出たのは、「形式ばらない」「社交的」「人望がある」「ユーモアにあふれる」「人情味がある」「よい性質をもつ」といった項目でした。
同じ人物が同じ講義をしても、事前に「温かい」人だと伝われば、その言葉の印象に引きずられて、これだけプラスの効果が出てくるのです。
しかも講義の後に行われた討論会にも、「温かい」と紹介したグループでは56%が参加したのに、「冷たい」と紹介したクラスは32%しか参加しなかったのです。第一印象で「冷たい」と思われると、その後の人間関係の継続についても消極的になることがわかります。
初対面で「温かな」人物だと思わせる
事前情報がどれだけ人物の印象を変えるのかが、この実験からわかると思います。しかも人が「温かい」のか「冷たい」のかは、人物を判断するときに中心的な役割を果たします。だからこそビジネスで事前情報になりうるフェイスブックなどでは、「温かい」と思える人物像を作り上げるようにする必要があるでしょう。
また初対面のときに、たとえ2秒でビジネスの技量を見抜かれることになっても、「人間的な温かさ」や「人懐っこさ」を伝えることをあきらめていけません。人として温かいと思えるエピソードなどを、初対面のときに伝えることは、その後の人間関係を築く上で大きなアドバンテージになるからです。