「まあ、食べながら話を聞いてください」の罠!情報受容行動のメカニズム

取引先などへ打ち合わせに出向いたとき、お菓子が供される場合があります。「まあ、食べながら話を聞いてください」といわれると、ついつい手を出してしまいたくなりますが、これは相手の罠かもしれません。有名な「フィーリング・グッド」実験で実証された、情報受容行動のメカニズムをご紹介します。

  1. 一見、古臭く感じるビジネス慣習にも心理学的根拠がある
  2. ジャニスの「フィーリング・グッド」実験
  3. ものを食べたときの気のゆるみ方は半端ない
  4. パワーブレックファーストやパワーランチの効果
  5. メカニズムを知れば怖いことはない!

一見、古臭く感じるビジネス慣習にも心理学的根拠がある

社会人になると、さまざまなビジネス慣習があることを痛感しますよね。そのなかにも、「取引先で出されたお茶を飲み干すと、要求を全部呑むということになってしまう」「どうしてもその案件を引き受けたくなければ、出されたお茶を飲むな。絶対に、何も食べるな」というものがあります。これらを「なんだか古臭いなあ」と感じたことはありませんか。

確かに、「それはそれ、これはこれ」として、出されたものをありがたくいただき和やかな雰囲気を作りつつも、締めるところはしっかり締めるというビジネスライクな対応を好む人は、現代人に多いでしょう。しかし、一見古臭く感じる慣習には、実は心理学的根拠があるのです。

ジャニスの「フィーリング・グッド」実験

1965年、アメリカの心理学者ジャニスは、自身の勤めるエール大学で以下のような実験を行いました。学部生216人を集めて、4つの話題についての説得文を読ませ、読んだ後にその説得を受け入れるかどうか、質問形式で測定を行ったのです。4つの説得文の内容は、それぞれ「癌の治療法について」「軍隊の規模について」「月世界旅行について」「立体映画について」でした。

学部生は、次の4つのグループに分けられました。ひとつめは、スナックを食べながら説得文を読むグループ。2つめは、スナックの提供を受けないグループ。3つめは、とある不快な環境で説得文を読ませられるグループ。4つめが、説得文を読まずに事前調査と最終測定だけを行うグループです。

結果、スナックを出されたグループのほうが、説得文に賛成するほうへ意見を変える傾向がみられることがわかりました。とくに「軍隊の規模」という話題においては、スナックを出されなかったグループの42.8%が説得文の主張に同調しなかったのに対し、スナックを出されたグループのうち説得文に同調した人の割合は、67.2%という結果になりました。

ものを食べたときの気のゆるみ方は半端ない

ジャニスの実験は、ふだん私たちが感じている「ものを食べているときって、なんだか和むし、気もゆるみがちなんだよなあ」という感覚が錯覚ではなく、判断能力に多大な影響を及ぼすことを明らかにしました。昔ながらのビジネス慣習も、あながち間違いではないと思えてくるでしょう。

もしもあなたが気の弱さや迎合しやすさを自覚しているなら、駆け引きが必要な商談のときには、うっかり出されたお茶やお菓子に手を付けないことです。ただでさえ崩れやすい主張が、相手のほうへどんどん流されて行ってしまいますよ!

大事なときこそ、自社のほうへ呼び寄せる手段を考えましょう。

パワーブレックファーストやパワーランチの効果

ものを食べながら商談する例として、最近流行を続けている「パワーブレックファースト」や「パワーランチ」があります。忙しいビジネスマンが、本来業務外である食事の時間に商談を進めることで時間を有効活用しようとするものです。夕食とは違いお酒が入らず、時間が限られているので、効率的に話し合いができるとされています。

そして、パワーランチの目的はもう一つあります。それはやはり「ものを食べる」という行為がフレンドリーさを促進させるという心理効果を利用して、双方の交流を深め、円満に話し合いを進めることです。

この場合、もちろん双方が食事をとることになるので、食べることがどちらかに有利になるわけではありません。しかし、お互いが態度を軟化させることで、対立する意見が丸く収まるかもしれないという期待は持たれます。和やかになりすぎて何も決まらないかも……という不安はありますが、そこは時間制限があるためまとめなければならず、うまくできているのです。

メカニズムを知れば怖いことはない!

惑わされたくなければ、出されたものには絶対に手を付けるな、という戒めのために、実験結果があるわけではありません。むしろ、目的は情報受容行動のメカニズムを知ることにあります。どんな人でも食べることで気がゆるみがちだということを、あらかじめ知っておけば何も恐れることはないのです。

メカニズムを知り、自分の判断をコントロールすることができれば、散々もてなされた後でも「否」を突き付けることができるでしょう。ビジネスシーンだけではなく、買い物や契約など日常生活のシーンにおいても注意してみましょう。

気乗りしない保険の見積作成などを待っている間に出されたチョコを口にすべきかどうか、それを食べたときの心理効果を知っていれば、きっとすぐに判断できますよね!

参考:「対人社会心理学重要研究集」3

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