日本人は地味色が好き? 「粋」の流行が生み出した独特の文化

外国を旅していると、建築物や人の衣服のカラフルさに驚かされることはありませんか。日本では、一般的な住居の色も、人々が着る衣服の色も、アイボリーなどの茶系、グレー系など、地味目な色味が多いですよね。それはなぜなのでしょうか。各国の色の好みと、日本人が好む色の違いを、江戸期の流行からひもときます。

  1. 意外にある、国民性による色の好み
  2. 日本文化は中国から来た?
  3. 日本人が渋好みになったきっかけは江戸期の倹約令
  4. 「粋」が流行し、地味色が素敵という意識が広まった
  5. 日本人の色の好みって、つまりそういうことかも

意外にある、国民性による色の好み

色の好みはごく個人的なものと思われがちですが、国民性によって、色の嗜好性は意外とはっきりしているもののようです。例えば、オレンジがオランダにとって特別な色であることは有名ですね。オランダ独立のために奮闘したオレンジ公にちなんで、オレンジは敬愛の象徴となっています。

また、イギリスには「ケンブリッジブルー」「ロイヤルブルー」「ジャスパーブルー」など、特別な青を意味する言葉が多く、「ブルーリボン賞」など最高位をあらわすのにも青が用いられます。北欧では高緯度の白い空になじむ淡い色合いが好まれますし、対照的に、ラテンアメリカの国々では赤道直下の暑さに負けない原色系が好まれる傾向にあります。

このように、国民性によってわりと色の好みはわかれており、色彩心理学的に考察すれば、きちんとそれなりの理由が見つかります。それでは、日本人の色の好みは、どんな由来によるものなのでしょうか。

日本文化は中国から来た?

色の好みは文化によるということを考えれば、日本文化は中国からもたらされたものが多いため、中国人と色の好みが似ているのでは?と考察することができそうです。確かに、中国でも日本でも、古来は赤、もしくは紅色が高貴な色とされ、積極的に建築物や衣服へ使われてきました。紫は「高貴な色」というイメージも、中国からの影響といわれています。

しかし、こと現代においては、日本で日常的に赤や紫を使った建築物を見ることはないでしょう。赤や紫の服も、どちらかといえば派手な印象で、特別好まれているといったイメージはありません。対して中国では、赤は今でも日常的に使われるラッキーカラーで、国民が好ましいと感じる色です。この差は、どこから生まれたのでしょうか。

日本人が渋好みになったきっかけは江戸期の倹約令

実は、日本人が地味な色を好むようになったきっかけが、ちゃんとあるのです。それは江戸時代の倹約令でした。幕府は贅沢を禁止する法令を次々と出し、その中には「高貴な者が着る紫色を、庶民が着てはならない」「庶民が公に着てよい色は、青・鼠色・茶色に限る」といったものもありました。

なかでも茶色は一般的に罪人の衣服に使われる色であり、これは日本に限らずヨーロッパでも同じでした。茶系の色はいたって簡単に作り出すことができるため、あまり大事にされることはなかったのです。華々しい色が禁止されて、江戸期の人はどんなにか浮かない気持ちになったことでしょう。

「粋」が流行し、地味色が素敵という意識が広まった

しかし、倹約令が作り出す暗い状況を打破する一手を持つ人たちがいました。当時人気を誇っていた、歌舞伎役者たちです。さまざまに表情を変える茶色やグレーの色合いを生かし、数々の流行色を作り上げたのです。これらは「役者色」といわれ、身につけることが「粋」とされる文化が江戸に広まりました。

倹約令を逆手に取り、「宵越しの金は持たない」といった江戸っ子の精神と、すっきりとした渋い色を身につけることを結び付けて「粋」と称した町人たちの美学は、革命的なものでした。世界的に見ればどちらかというと暗い色、ネガティブな色とされてきたグレーや茶色が、江戸期の日本では180度転換して「おしゃれな色」になったのです。

日本人の色の好みって、つまりそういうことかも

あなたも、衣服を選ぶとき、あるいはカーテンなどインテリア用品を選ぶとき、無意識にベージュやグレー、ブラウンといった地味色を手に取っていませんか。「なんだか落ち着くし」と思うなら、それは江戸っ子の精神を連綿と受け継いでいる証拠かもしれませんよ。

「むしろ茶色や鼠色が好き」と宣言するのは、江戸期の倹約令に対する反骨精神すら象徴しているのかもしれません。「農民は、生かさぬように、殺さぬように」という言葉を残した徳川家康が現代の色事情を見たら、地味色をお洒落で粋に使いこなしている日本人の姿に、きっと驚くことでしょう。

参考:『カラー版徹底図解 色のしくみ』p.219  『はじめて読む色彩心理学』p.6

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