「僕は穏やかなタイプだからね」といった自己評価の性格分析を聞いて、驚いたことはありませんか?「全然違うのに……」と。でも、反論は禁物。こうした発言には、けっこうな強い思いがあったりするものです。
- アピールする性格を認められたい心理
- 自分への質問を選択する実験
- SNSでも要注意!
アピールする性格を認められたい心理
「僕は面倒見がいいからね」とか、「人が良すぎて苦労しているんだよ」と言った言葉に驚くことはありますよね。「人が良すぎたら、そんな主張しないでしょう」と反論したくなり、ちょっとイライラしてしまうことだってあるかもしれません。
こうした行動は、心理学で「自己確証フィードバック」と呼ばれます。
『他人の心理学』(渋谷昌三 著 西東社)では、
「自分は自分が思っているタイプの通りの人間だということを確信し、周囲に同意(確証)を得る行動を積極的に行うこと」
と、この心理を説明しています。
つまり自分の性格についてアピールする人は、そうした性格だと周りからも同意してもらいたいと思っているわけです。
自分への質問を選択する実験
「自己確証フィードバック」の実験で有名なのは、心理学者スワンとリードの実験です。二人はテキサス大学の女子学生70人に自分の性格を評価してもらい、「自己主張の強い人達」と「自己主張の弱い人達」、「感情的な人達」と「感情的ではない人達」に分けました。
次に「この実験は他人と知り合いになる過程を調べるものだ」として、男子学生の実験参加者に会ってもらうことを伝えます。その上で男子学生に質問してもらいたい項目を選んでもらったのです。
結果、「感情的な人達」は「友人が死亡した場合、この人はきっと取り乱すだろうと思わせるものは何か」など、感情的な反応に肯定的な質問項目を選び、「感情的ではない人達」は「挑発された場合でもこの人が怒らないのはなぜか」など感情が抑制された場合についての質問項目を選んだのです。自己主張の強弱についても、同じような結果が得られました。
つまり70人の女子学生は、自分が思っている通りの性格に沿った質問をしてもらいたいと思っていたことが、この実験で明らかになったのです。
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SNSでも要注意!
この「自己確証フィードバック」は、会話だけではなくSNSなどでも起こります。自分はこんな人間だというエピソードが、フェイスブックやインスタグラムなどにアップされたときは、どうしても肯定してほしいものなのです。すぐさま「いいね」をクリックしてあげましょう。
ビジネスでも、クライアントが自分の性格をアピールし始めたら、肯定してあげた方が交渉がスムーズに進みます。もちろん自らの性格分析は勘違いも多いので、ときに「ん!?」と思うこともあるでしょう。しかし相手が「肯定」を求めているのだと分かっていれば、すべてを認められないとしても、どんな言い方をすれば相手の願望が満たされるのかは考えられるでしょう。
ネットの発達によって、「自己確証フィードバック」の要求も強まっているようです。これは性格についてのアピールだなと感じたら、慎重かつ丁寧に返答しましょう。
参考:『他人の心理学』(渋谷昌三 著 西東社)『対人社会心理学 重要研究集6』(誠信書房)