「何もしたくない」と思うことは、誰にでもあることではないでしょうか。では、そのようなやる気が起きない無気力状態は、どうして生じるのでしょうか? 心理学実験の結果から、その原因と対策について説明しましょう。
- コントロールできないことが無気力に
- コントロールできない状況を3つの側面から分析
- 無気力への対策は
- やる気を高めるテクニックを紹介
コントロールできないことが無気力に
人間の無気力に関する実験を、1974年に心理学者のヒロトが実施しました。
彼は実験参加者を3グループに分けて、イヤホンで不快な音を何度も聞かせました。
1番目のグループは目の前にある箱のスイッチを正しく押すことができれば、音を消すことができるようになっていました。2番目のグループは1番目のグループと同じ様に音を聞かせましたが、こちらはスイッチを押しても不快な音は止まらない設定になっていました。3番目のグループは、特に何の課題も与えませんでした。
この3つのグループの実験後半、1番目のグループと違ったスイッチで、不快な音が止まる箱が全てのグループに配られました。そのとき、3つのグループの実験参加者がどんな行動を取るのかを観察しました。
まず第1グループは、不快な音を止めることに87%の確率で成功しました。2番目のグループは50%の確率で成功し、3番目のグループの成功率は89%だったのです。
いきなり課題を与えられた3番目のグループの9割近くが、不快な音を止めるのに成功しているのに、2番目のグループが不快な音を止められなかったことから、実験の前半で何をしても音が止まらず、不快な刺激をコントロールできないと思い込んだことで無気力になったと結論づけられました。
コントロールできない状況を3つの側面から分析
つまり現状をどうやっても改善できないと学ぶことで、人は気力を失ってしまうのです。別の実験では、回答不可能な問題を与えられ続けた児童の多くは、回答できる問題にも正答できなかったとい報告されています。
また、こうした無気力な状態は、抑うつ傾向の高い人の状態と近いことも、別の実験で明らかになっています。
では、どのようにして問題を捉えている人の無気力感は強まるのでしょうか?
心理学者のセリグマンは、コンロトールできない原因を3つの側面から捉えました。
①内的―外的(原因は自分にあるのか、外にあるのか)
②安定的―不安定的(コントロールできない状況はずっと続くのか)
③全体的―特殊的(この案件だけの問題なのか、他にも当てはまるのか)
最も深刻なのは、内的(自分が悪く)、安定的(今後もずっと続く)、全体的(他にも当てはまる)を選択した人だそうです。
無気力への対策は
無気力への対策を考える上でも、先述のセリグマンの3つの捉え方は有効です。
自分が悪いのでなければ、環境を変えることで問題をコントロールする可能性が生まれますし、コントロールできない状況が時間的に限られているなら、その期間だけ対策を立てればいいでしょう。またコントロールできない状況が限定的ならば、無気力な対応を他の生活領域に波及させないことが重要になってきます。
また無気力について他の人に相談してみることも有効でしょう。
というのも、同じようにコントロールできない問題に遭遇しても、無気力になるかどうかは人によって異なることが実験でも明らかになっているからです。
実際、コントロールが効かない状況が続いても、いっこうにめげない人もいます。状況を打開するためのチャンレジができる余地があるかどうかは個人差が大きいので、現状の問題をどう感じるのかを他人に聴いてみれば、問題が解決する可能性があります。
例えば、多少の失敗は折り込み済みなので、そもそも気にする必要がないといったことだってあるでしょう。
やる気を高めるテクニックを紹介
上記のケースは、かなり深刻な無気力の症状への対策ですが、ちょっとやる気がでないといった軽い無気力に襲われることもあるでしょう。そうしたへの対策も最後に書いておきましょう。
仕事の取り掛かりが難しいADHD(注意欠陥多動性障害)傾向のある米国人がネット紹介して話題となった、やる気を高めるテクニックです。
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①快適な姿勢で座る
②タスクに取りかかるところをイメージする
③タスクの1つ1つのステップをイメージする
④ステップの最初から最後までを繰り返す
この方法を公表したエドワードさんは、モチベーションの上がらない先延ばしは、仕事に取り掛かることへの恐怖があると分析しました。そこで不安を抑えるように頭でシミュレーションを繰り返すと、実際に仕事に取りかかれるというわけです。
無気力への対策として、ぜひ試してみてください。
参考
『モチベーションをまなぶ12の理論』(鹿毛雅治 編/金剛出版)