テレワークは便利だけれど、コミュニケーション不足を感じることも多いようです。そこでテレワーク時のスムースなコミュニケーションのヒントをご紹介します。
- Webのコミュニケーションにテクノロジーの壁
- テレワークで7割以上が困っている
- 小さな工夫を積み重ねる
Webのコミュニケーションにテクノロジーの壁
米国のコミュニケーション専門家であるニック・モーガン博士は、web上のコミュニケーションの問題点として、次の3つを挙げています。
①webで築いた信頼関係は、時間とともに低下する
②webを通したコミュニケーションは、頻繁に誤解される
③webの「仮想世界」で築いた信頼や約束は、対面の世界よりも弱い
あくまでも一般的な話であり、リアルに会う機会も少なくないビジネスにおいて、上記の問題点が必ずしも表面化するわけではないでしょう。ただ、テレワークと対面での話し合いは、上記のような違いがあることは覚えていた方がいいでしょう。
しかもニック・モーガン博士は、上記の問題点はただ注意深く相手の話に耳をすませるだけでは解消されないと論じています。それは相手の返答が1000分の数秒といった単位で遅れも相手の評価に影響を及ぼしてしまうからであり、現状のテクノロジーの限界だとも書いています。
やはりZoomなどのWeb会議システムでの相手の印象を、実際に会ったときとまったく同じに扱うべきではないのかもしれません。
テレワークで7割以上が困っている
2020年10月にカオナビHRテクノロジー総研が発表した「リモートワーク」についての実態調査では、「社内の対面コミュニケーションが減少したことで、うまくできずに困っていることはありますか」という質問に対し、75.3%が「困ったことがある」と回答しました。
実際に困っている内容のトップ3は以下の通りです。
「何気ない会話でリラックスをすること」 29.8%
「他部署や他チームの動向や、周りの人の仕事の状況を自分が知ること」 27.4%
「部下や後輩への指示・指導や育成」 20.2%
また、2020年10月に筑波大学が発表した「『テレワークによる社内コミュニケーションの変化』に関する調査(速報)」でも、
「相手の表情や気持ちがわかりづらい」
「普段以上に、注意しながら話さないといけないと感じる」
「些細なやり取りや雑談などがしづらい」
といった項目が、テレワークに関する不満として比較的上位にきています。
もちろん会いに行くための時間が不要になったといったテレワークの利点も多いのですが、マイナス面に着目すると上記のようなポイントが浮かび上がるのです。
小さな工夫を積み重ねる
では、ビジネスの現場ではどのような工夫がなされているのでしょうか?
Web会議での工夫については、筑波大学の調査が参考になるでしょう。
「会議前に、参加メンバーに会議資料を共有しておく」
「会議前に、会議のテーマや論点を明確にしておく」
「質問や疑問を尋ねる時間を確保するようにしている」
「雑談や世間話など、会議と関係ない話題を意図的に含めている」
Webでは発言するタイミングが難しいといったことも、アンケート調査であがっているので、皆が発言しやすい環境をつくるのも大切なのでしょう。
では、コミュニケーションを全般については、どんな点を工夫すべきなのでしょうか?
株式会社カオナビと筑波大学の調査においても、テレワークで
「メールやチャットの活性化」
に力を入れていることがわかりました。さまざまなコミュニケーションのチャンネルを活用することで、よりコミュニケーションの質を高めていこうという動きでしょう。
また、挨拶や雑談をチャットで行うようにすることで、コミュニケーションが活性化したケースもあるようです。気軽にやりとりをすることで、同僚や部下の様子が何となく共有できるようになるのは、職場としては重要なことでしょう。
また、気になったときは、
「一対一のオンラインでコミュニケーションを取る」
ようにしているといったことも、工夫の一つとしてあがっています。筑波大の調査によれば、映像を活用した一対一の会話でのコミュニケーションが1日数回にも及ぶと答えた人が21.9%もあり、企業によっては、かなり頻繁に行われていることがわかります。
テレワークにはプラスな点もいっぱいありますが、対面と同じ効果は得られない状況だけに、さまざまなフォローをしていくことが大切になるようです。
どれも特別ではないけれど、しっかりと積み重ねていくことでコミュニケーションの質は高まるようです。
コミュニケーション能力について興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「The Problem with Virtual Communication」(Dr.Nick Morgan/Public Words)/「『テレワークによる社内コミュニケーションの変化』に関する調査結果(速報)」(筑波大学 働く人への心理支援開発研究センター)/「リモートワーク実態フォロー調査レポート」(カオナビHRテクノロジー総研)