新型コロナウイルスの新たな感染拡大の中、ストレスや不安を抱えている人も少なくないことでしょう。そうしたパンデミック下のストレス要因の一つである「不確実性」への対処法をまとめてみたいと思います。
- コロナ禍で3人に2人がストレスを
- あいまいさを受け入れる
- コントロールできない現実を受け入れる
- コントロールできるものに力を注ぐ
コロナ禍で3人に2人がストレスを
2021年9月に明治安田生命が発表したアンケート結果によれば、3人に2人がコロナ禍で「ストレスを感じている」と回答しています。ストレスの要因については、以下のような結果となっています。
1位 「外出が制限されるから」……62.9%
2位 「新型コロナウイルスに感染することが心配だから」……54.9%
3位 「人に会う機会が減ったから」……47.3%
こうしたコロナ禍での具体的なストレス要因に大きな影響を及ぼしているのといわれるのが、「不確実性」という問題です。簡単に言えば、見通しのきかない状況のこと。新型コロナウイルス感染症の影響は多岐にわたる上、いつ終わるともしれないといった先の見えない状況です。これまでの常識とは違う方法で対処し続ける必要があり、考えてもみなかったリスクの対処に追われることにもなります。
じつは一時的な外出制限があったとしても、時期や目的、解除の基準などがハッキリしていれば、ここまでのストレスにはならないでしょう。ある程度我慢すれば元の生活に戻れるという確実な見通しがあれば、気持ちもかなりラクになるからです。
しかもニッセイ基礎研究所のレポートによれば、経済・社会・環境といった世界のシステムが脆弱化し、ネットワークが拡大・複雑化していることで、正解の不確実性が高まっているそうです。
確かに異常気象によって予期せぬ災害が起きたり、商品が消費者の手元に届くまでのシステム「サプライチェーン」の混乱によって、いきなり商品が品薄になるといったことも起きています。「これまでと同じような天気だったら起きなかった」とか、「海外のそんな小さな変化で品薄に!?」といった予想外のリスクが起きやすくなっているのは確かでしょう。
そこで、今後ますます重要になると思われる不確実性への対処法を、クレイ・ドリンコ博士のレポートから紹介していきましょう。
①あいまいさを受け入れる
モヤモヤとして気分が晴れない状態が続くと、白黒をハッキリつけたいと思ってしまうかもしれません。問題の原因を突き止めて責任を取らせようとするといった行動が、昔より増えているなと感じている人も多いのではないでしょうか。
不確実性への耐性を高めたいのであれば、少しだけ結論を先延ばしにするなど、あいまいなことをあいまいにしておくことが重要になるそうです。また、あいまいさを許容するとメンタルヘルスにもプラスに働くといった報告もあります。
ただクレイ・ドリンコ博士は、あいまいな状況を見ないふりをするという態度を推奨しているわけではなさそうです。むしろあいまいさがあることをわかりつつ、モヤモヤした状況に留まるようにすべきだと書いています。
すべてにすぐ白黒つけようとせず、少しだけあいまいな状況に留まるようにすることで、不確実性がもたらすストレスへの耐性が高まるようです。
②コントロールできない現実を受け入れる
不確実性が高まった世界がツラいのは、不確かな未来があることだけではなく、これまでにないリスクにも見舞われることです。そうした予想外のリスクが発生したときには、これまでのリスクヘッジがまったく役立たない場面も出てしまいます。
例えば、過去の「ヒヤリハット」を積み重ねて、より失敗がないようにシステムを組んでいたのに、まったく想定外の問題が起きてしまうのです。インフルエンザが多少流行っても仕事を回す余裕がある職場であっても、一部署の従業員全員が濃厚接触者になってしまったら、その部門の仕事は止めざるを得ないかもしれません。
こうした予測できないリスクは受け入れざるを得ない側面もあるので、受け入れることも必要だとクレイ・ドリンコ博士は語っています。
③コントロールできるものに力を注ぐ
先が見えなかったり、予想外のリスクに直面したとしても、自分でコントロールできることも常にあります。例えば、テレワークの頻度は感染状況によって変わってくるかもしれませんが、テレワークをしやすい環境は自分で整えることができます。
クレイ・ドリンコ博士は、自分に起きている変化をとらえ、自分が何をコントロールできるのかしっかりと捉えるよう提言しています。自分のできる範囲をしっかり見極めて、その範囲に注力することが重要だというのです。
大きな変化を前にしたとき、人は何もできることはないと思いがちです。しかし細かく分析してみれば、自分の努力で対処できることもあるでしょう。
まず、現状分析から始めてみましょう。
そもそも私たちは不確実な未来を生き続けてきたのです。少し長いスパンで考えれば、明日も今日と同じような日々が続くとは限らないことがわかります。その中でどのように生きるべきかを、私たちは真剣に考える必要があるのかもしれません。
心理学に興味のある方はこちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「あいまいなことをあいまいのままにしておく大切さ」(心理学科・坂本/人間環境大学)/「3 Ways to Boost Your Uncertainty Tolerance」(Clay Drinko, Ph.D./Psychology Today)/「新型コロナが顕在化させた不確実性の高まる世界-想定外の不確実性をもたらす世界の脆弱性とネットワーク化」(佐久間誠/『基礎研REPORT(冊子版)8月号』)