孤独が死亡リスクを高めることを知っている人は多いかもしれません。そこでオランダで実施された大規模調査を基に、孤独に関する情報を整理してみました。
- 年配男性の危険性
- 孤独を楽しむための2つの心得
年配男性の危険性
孤独の死亡リスクは肥満の2倍高く、1日にタバコを15本吸う危険性に匹敵するといった話を聞いたことがあるでしょうか? 日本政府も孤独・孤立対策に動き始めています。昨年にはで世界で2番目となる孤独・孤立対策担当大臣も任命されました。
では、どんな人が孤独を感じやすいのでしょうか?
19〜65歳のオランダの成人7885人を対象にした調査では、まず孤独を2つのタイプに分けています。1つは親密な人間関係が書けている「感情的な孤独」です。離婚や死別などによって感じる孤独が、その代表例です。
もう一方は「社会的な孤独」です。これは社会のネットワークに十分に所属していないと感じる孤独であり、新しい学校や職場に通うようになった人が感じる孤独だそうです。
「感情的な孤独」と相関関係が高い項目は、「未婚」「一人暮らし」「失業中」「高い肥満度指数」「不安などの心理的苦痛」だそうです。
一方で、「社会的な孤独」は、「年配の男性」や「低学歴の男性」といった項目との関連性が指摘されました。
逆に「社会的な孤独」が低いタイプの人は、「女性」「若い年齢」「喫煙」「中程度以上の教育レベル」と言った結果がはじきだされたそうです。そして「喫煙」や飲酒などが孤独を遠ざけるのは、こうした行動が社交行事への参加と結びついているからだと分析しています。
欧州での結果がそのまま日本に当てはめることは危険かもしれませんが、日本でも配偶者と離別した男性の孤独のダメージが大きく、離別男性の糖尿病による死亡率は有配偶者の12倍といった数字もあり、年配の男性の孤独は注意すべきことなのかもしれません。
孤独を楽しむための2つの心得
孤独を感じたら、何かしらのつながりを求めることは重要でしょう。しかし現代人にとって孤独は、ただ嘆くだけのものではないという意見もあります。臨床心理学の専門家である諸富祥彦・明治大学教授は、主体的に孤独を選択したり、世の中の喧騒から離れて孤独に徹するといった孤独のあり方も提唱しています。
その上で、一人を楽しむために必要な心理も解説しているので紹介しておきましょう。
①ほどよい諦めと向上心
何でもできるという万能感は、自分を苦しめることにつながります。「自分はこれほどのものなんだ」と受け止め、程よく諦めることが重要だと諸富教授は指摘します。
一方で向上心がまったくなくなってしまう危険性も説き、自分の実力を理解した上で「それでも自分のできる仕事をやってみよう」といった挑戦が必要だとも書いています。
ほどよい諦めと向上心は、ときに相反するイメージもありますが、そのバランス感覚が、自己否定をしない成熟した人生を築くのであり、一人を楽しみ、自分らしく生きることにつながるのだそうです。
②他人に理解を求めない
他人に「わかってほしい」と思ったり、「リスペクトしてほしい」と感じたりと言った思いが強い人は、周囲に振り回れて生きている可能性が高いそうです。自分自身に正直に生きること、他人にわかってもらえなくても自分に価値があると思えることが、孤独を楽しめる礎となるようです。
今日は孤独についての大規模研究の結果と、孤独をあえて選択していくために大切になる心理についてまとめてみました。孤独であっても生きていけるようになったのは、集落全体の協力がないと生き残れないといった社会状況にないからでしょう。つまり現代人は孤独を拒否することも、受け入れることもできるわけです。自分の気持ちに正直に、孤独にどう対処するのかを考えるのも重要かもしれませんね。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Social and emotional loneliness in a large sample of Dutch adults aged 19-65: Associations with risk factors」(Amy Hofmana/Regina I.Overberga/Eric C.Schoenmakersb/Marcel C.Adriaansec)/『孤独の達人 自己を深める心理学』(諸富祥彦/PHP研究所)