「生産性の奴隷」かどうかをチェックする3つの質問

「生産性」や「コスパ」という単語を耳にすることが多くなりました。サービスや商品だけではなく、ときに人や人間関係の価値を「生産性」や「コスパ」で判断する人まで。そこで「生産性」や「コスパ」に気にし過ぎた結果、仕事だらけの人生になってしまう心理についてまとめました。

  • 結婚も「コスパ」で測る!?
  • 生産性への高い意識がワーカーホリックを生む!?
  • 「生産性の奴隷」に関する3つの質問

結婚も「コスパ」で測る!?

「生産性」がメディアなどで広く取り上げられるようになったきっかけは、日本の労働生産性が先進国の中で最低レベルだといった話題からだったと思います。「会社に長くいればいい」といった風潮を払拭するためにも、生産性を考えた働き方をすべきだというのは、しごくもっともな議論のように思えました。

しかし「生産性」や「コスパ」で社会を見る意識は、どんどん加速しています。さまざまなサービスをWebで比較して、コスパで選ぶといったことは、すでに誰もがやっていることでしょう。

また、コスパが悪い人間関係といった意識も出てくるようになりました。

国立社会保障・人口問題研究所が実施している「出生動向基本調査」の独身者調査によれば、結婚の利点については2000年代以降「精神的安らぎの場が得られる」が減少傾向にあります。さらに「愛情を感じている人と暮らせる」は10%代になっているのです。
逆に女性に限っては、「経済的に余裕が持てる」が2002年から2015年で倍増の勢いとなっています。これは日本の経済状態が厳しく、その煽りを女性が受けやすいといった背景もあるかもしれません。そして独身を貫く男性の主張としてメディアに取り上げられるようになったのが、「結婚はコスパが悪い」だったのです。

生産性への高い意識がワーカーホリックを生む!?

「生産性」や「コスパ」にこだわることの問題点について、米国の臨床家エリオット・コーエン博士は、人間の価値と尊厳が生産性と同一視される傾向だと指摘しています。

こうした社会的な傾向は、米国ではワーカーホリックを生み出していると、コーエン博士は語ります。というのも生産性にとらわれて「生産性の奴隷」となってしまうと、自分だけではなく他者にも高い生産性を望むようになり、結果的に目標達成できない自身の不安を増大させてしまうからです。そのためゆとりある生活を投げ出して、仕事ばかりの生活に陥りがちなのだそうです。

こうした主張の背景には、2016年に経済協力開発機構が発表した年間平均労働時間が、米国は日本を上回るほど長時間だったという現実もあります。不景気で仕事が少なくなるとクビを切られる可能性があるため、米国の労働者はよりよいパフォ―マンスを維持しなければという強い思いがあるのだそうです。

こうした米国の社会的背景がすべて日本に当てはまるわけではありません。しかし重なっている部分が多いのも事実でしょう。

先にも触れた通り、日本でも生産性による自分の評価を耳にする機会が増えています。「あいつは生産性が低いからダメだよ」といった悪口や、「君は社内でも生産性が低い」といった人事評価などなど。

一方で人は病気になったり、年齢を重ねる中で、生産性を下げてしまうことはあります。過労などで一時的に生産性が下がることもあるでしょう。あるいは終わりのなき生産性向上の限界に突き当たることもあるはずです。

生産性が落ちたとき、あるいは生産性が落ちるのが怖いと感じたときに、日々の生活が仕事で埋まってしまうという状況が生まれてしまうかもしれません。

「生産性の奴隷」に関する3つの質問

コーエン博士は、「生産性の奴隷」になっているかどうかをチェックする3つの質問をまとめています。

①休日に仕事のことが心配になる
②忙しく休暇が取れない
③起きてすぐメールをチェックする

生産性を強く意識しており、なおかつこの3つの質問にすべて「はい」と答えた人は「生産性の奴隷」となり、仕事だらけの人生に陥っている可能性があるでしょう。

コーエン博士は、生産性にこだわり過ぎるのではなく、生産性と自身の価値が無関係だと認識して、より楽しい生き方を見つけるべきだと説いています。会社や社会に役立つ人材になることだけに縛られず、自由に生きるべきという主張は改めて考えてみるべきテーマかもしれません。

人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「The Myth of Productivity in America」(Elliot D. Cohen Ph.D./Psychology Today)/「独身男が「結婚コスパ悪い説」を信奉する理由」(荒川 和久/東洋経済オンライン)

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