関わると意のままに操られ、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼし、自分の居場所を奪われかねない。そんな攻撃的で危険な存在「マニピュレーター」について、まとめてみました。
断ったら罪悪感を抱くような言い回し
他人の心をコントロールすることで、利益を得たり、優越感を満たそうとするのがマニピュレーターです。他人を操作するタイプと考えればいいでしょう。ただ、これだけだとちょっと分かりづらいかもしれませんね。マニピュレーターの典型的なパターンは、断ったら罪悪感をいただくような誘導です。例えば「私のことを好きなら、今晩は一緒に映画を観るよね」とか、「あなたが私の子どもを迎えに行ってくれないと、子どもが放り出されちゃうから」、「話したいのに君が忙しそうだからできない」といった発言です。通常であれば、「今夜、映画見たいから一緒に行きたいな」であったり、「どうしても急用があるんだけど、子どものお迎えを頼めるかな」、「時間のあるときにお話ししたいと思います」と話せばいいような案件です。このような言い方であれば、言われた方も自分の都合に合わせて断ることもできるし、もちろん引き受けることもできるでしょう。しかしマニピュレーターは相手に断らせず、自分の思い通りに相手を操ろうとするのです。具体例を読むと、会社や仲間内で同じようなタイプの人が居たなと感じる人かもしません。米国のケース・ウェスタン・リザーブ大学のグンヌール・カラクルト博士は、マニピュレーターの一つのパターンである強制的な支配について、女性の41%、男性の43%が経験していると書いています。関わりたくはないけれど、意外に身近にいたりするのがマニピュレーターなのです。
マニピュレーターの手口5選
マニピュレーターの厄介な点は、知り合った当初から嫌な人物とは限らないこと。むしろ魅力的に見えることがあります。ただ、付き合っていくうちに、何だかおかしいと感じるようになり、最終的には自分が搾取されていることに気付きます。
だからこそマニピュレーターの心理操作方法を学び、早めにそのワナから逃れる必要があります。そこでマニピュレーターの代表的な手口を紹介しておきましょう。
①ウソや矮小化
ウソをついたり、事実を小さく見せかけることで、状況を操作します。他人が自分の悪口を言っていたというウソをついたり、「それは過剰反応じゃない」と問題がないかのように振る舞うのが得意です。マニピュレーターの発言によって、現実の捉え方が歪んでしまうのです。
マニピュレーターの言葉を信じて他の人への信頼が揺らいだり、迷惑をかけられているのに「気にしすぎかな」と考えてしまうようだと、彼らのワナにハマっていることになります。
②攻撃と脅し
ときに怒りを露わにして攻撃してきたり、脅してきたりすることがあります。しかも、その原因はあなたであるように振る舞います。
「本当に自分勝手だよね。二人の関係がギクシャクしているのは、あなたの性格のせいだよ」
「こんなことすらできないようだと、クビにするしかないな」
そんな言葉を発するようなら要注意です。また怒って話さないといった態度や細かなミス・欠点の指摘などは、マニピュレーターの得意技の一つです。
③小さな罰
自分の思い通りにならないことがあると、あなたに小さな罰を与えることがあります。情報を渡さなかったり、愛情表現を控えるといったこともあるでしょう。彼らが望むような行動をするまで、マニピュレーターはあなたの行動を“矯正”するために罰を与え続けるでしょう。
④受動的攻撃性
正面切って攻撃してくるわけではないものの、遅刻を繰り返したり、無視したり、友人の輪から外すといった攻撃をしかけてきます。
「受動的攻撃性」について詳しく知りたい人は、以下をクリック
気づきにくい嫌がらせをしてくる「受動的攻撃性」を持つ同僚への対処法
⑤ガスライティング
間違った情報を強要し、自分のしていることが信じられなくなるように誘導する手法です。
「ガスライティング」について詳しく知りたい人は、以下をクリック
「いつもあなたが悪い」と責められるなら疑いたい「ガスライティング」
こんな行動傾向があったら要注意
心理操作以外にも、マニピュレーターの行動はいくつかの傾向があります。マニピュレーターかもと感じる人がいたら、こうした傾向があるか考えてみましょう。
①感情にとても敏感
感情への敏感さは、他人を操るために必要です。だからこそ、あなたの反応を予測しているような振る舞いがあったときは要注意。もちろん感情に敏感で優しい人も多いので、感情に敏感だからマニピュレーターというわけではありません。
②所属組織・グループが頻繁に変わる
マニピュレーターは同じ環境に留まることができません。というのも自分の本性がバレそうになると、仕事や仲間を変えていくからです。また都合のよい「犠牲者」が居なくなったときも、所属を変えます。例えば自分の仕事を言いように押し付けられる部下がいなくなると、転職したりするのです。
③同じパターンを繰り返す
マニピュレーターは一度成功したパターンを使いまわすことが多いようです。たとえば恋人に働かせて、ヒモのように生活してきたなら、恋人を変えても同じような関係性を築くことが多いようです。
④必要以上の特別扱い
しきりに褒めたり、自分に関心があるような態度をすることがあります。そうした態度に気を許すと、他のメンバーの前ではあなたをこき下ろしたりもします。
褒めて近づきながら、攻めて支配するといった行動パターンは、マニピュレーターの行動パターンの一つなので、むやみに褒めてくるような人は少し気を付けた方がいいかもしれません。
マニピュレーター3つの対策
マニピュレーターには関わらない方がいいでしょう。しかし常に相手を避けられるわけではないので、その対処法についても書いておきましょう。
①線を引く
マニピュレーターはどんどん支配を拡大しようとしてきます。職場の先輩なのに、プライベートにまで口を出してくるといった行動は、その典型でしょう。そうした介入には、しっかりと線を引きましょう。
「それは私個人の問題ですから」と話すのも、一つの方法でしょう。
②卑劣な行為に加担しない
誰かの悪口を言うことで、あなたをコントロールしようとする場合、マニピュレーターの悪口に同調しないことが重要になります。そうした悪口を通して、マニピュレーターが何を得ようとしているのかを考えてみましょう。
③助けを求める
相手からの支配が強まってしまったときは、自分に自信が持てず、マニピュレーターに依存してしまうケースが少なくありません。そうした状況になったら、周りの人に助けを求める方がいいでしょう。自分だけでは対応できない状況になっているかもしれないからです。
今日はマニピュレーターについてまとめました。攻撃的なタイプの一つのパターンですが、マイナスの影響が多いので、なるべく避けるようにしたいものです。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Signs of Manipulative Behavior」(Geralyn Dexter/verywellhealth)/「Signs of Manipulation in Relationships」(Sheri Stritof/verywellmind)/「Manipulation: Symptoms to Look For」(Jabeen Begum/WebMD)/「上司や同僚に心を操られそうになったら、3つのアプローチで対処する」(リズ・キスリク/Harvard Business Review)