同じことを考え続けてしまう反芻思考の対策9選

気が付いたら同じことをグルグルと考えて自分を責め続けていた。そんな状態に困っていませんか? 自動的に頭をグルグル回る「反芻思考(はんすうしこう)」の止め方について、まとめてみました。

  • こじらせると怖い反芻思考
  • 反芻思考3つの特徴
  • 反芻思考9つの対策

こじらせると怖い反芻思考

「あんなことを言わなければ、別れることはなかったのかも」「あの日、電話を取らなければ、あんな失敗をすることなかった……」。こんなふうに過去の問題で頭がいっぱいになり、考えても仕方ないと思いながら、考えずにはいられない。そんな状態に悩んだ経験は、誰にでもあることかもしれませんね。

しかし長年の研究によって、ネガティブなことを考え続ける「反芻思考」が、心身に悪影響を及ぼすことがわかってきています。アメリカ心理学会によれば、反芻思考によってうつ病の長期化や悪化、思考能力の低下、睡眠障害、慢性的なストレスといったことが起きる可能性があるというのです。

英国リバプール大学のピーター・キンダーマン博士は、過去の経験からうつ病や不安症になるケースは、その問題を反芻して自分を責めることから起きているという見解を示しています。
過去の行動や状況を思い出しながらグズグズと考えてしまうのは、誰にでもあることですが、行き過ぎるとけっこう危険なのです。

反芻思考3つの特徴

では、反芻思考が起きると、どんな考え方になっていくのでしょうか? 3つの特徴を紹介しておきましょう。

①ネガティブな出来事にフォーカスして自分を責める
典型的なのは、「自分があんなことしなければ……」といった思考です。問題が起きたのは、自分のせいではないかもしれませんし、たとえ自分に落ち度があったとしても不可抗力だったのかもしれません。しかし反芻思考で頭がいっぱいになると、問題の原因がすべて自分だったように思えてしまいます。

日々、自分が悪いと責め続けているのですから、精神的にきつくなるのは当然でしょう。

②現状をよりネガティブに解釈する
例えば恋人と別れたことで、より自由に生きられるチャンスを得たかもしれないのに、現状を孤独で不幸だと思い込んでしまうかもしれません。部署を異動したことで、より自分の能力を発揮できるようになったかもしれないのに、最悪の環境で働いていると感じてしまうかもしれません。

多くの場合、現状はプラス・マイナス両方から解釈することができます。しかし反芻思考に捕らわれると、マイナス面をより強く捉えるようになります。そうした考え方は、気力を削いでしまう可能性があります。

③将来を絶望視する
反芻思考がクセになると、明るい未来を思い描きにくくなります。
自分を責め続け、現状をネガティブに感じてしまうのですから、未来に明るい展望を抱けないのは当然かもしれません。
しかし実際に将来の展望が開けないのかどうかはわかりません。ネガティブな思考に惑わされて、未来の「希望の種」が見えなくなっているだけかもしれないからです。

反芻思考を繰り返し、なおかつ上記のような思考になっている場合で、ツラさが続くようであれば病院などで、専門家に相談することも必要かもしれません。

反芻思考9つの対策

「反芻思考」から脱す方法については、さまざまな方法が紹介されています。それらの方法を反芻思考が起こる前に実施する「予防」と、実際に反芻思考が起きてからの対処となる「対策」に分けて紹介しましょう。

予防①変えられないことを見極める
反芻思考の中心にある後悔や自責に関連して、何に対処できて、何が変えられないのかを見極めましょう。
例えば過去の失敗そのものは変えることができません。一方で失敗によって無くした信頼を、少しずつ回復することはできるでしょう。就職活動での面接の失敗を変えることはできなくても、同じ企業にもう一度チャレンジすることはできるかもしれません。

反芻思考は変えられないことに集中する傾向があります。つまり考えても仕方がないことを、ずっと考えている状態なのです。こうした状況を変えていくために、何が変えられて、何が変えられないのかを判断することが大切です。

予防②計画を立てて行動を起こす
自身の行動でどうにかできそうなことがあったなら、計画を立てて動いてみましょう。重要なことは問題処理のために、小さな一歩を踏み出すことです。こうした行動によって、膨れ上がった不安を解消できるかもしれませんし、自分の人生をコントロールできていると感じられる可能性があります。
実際の行動をできるだけ小さく分けて、一歩ずつ前に踏み出してみましょう。

予防③目標を見直す
反芻思考の原因が、完璧主義や非現実的な目標設定にあるかもしれません。高すぎる目標を掲げて、到達できない自分を責めるのはやめましょう。目標を少し低く設定すれば、自分を責める材料が少なくなるかもしれません。

予防④トリガーを見つける
反芻思考が現れるきっかけとなるものを探しましょう。それは友達のマウントかもしれませんし、SNSの情報かもしれません。いずれにしても、何を見聞きしたことで反芻思考に突入してしまったのかを突き止め、そうしたトリガーをなるべく生活から排除してみましょう。

予防⑤うまくいったことを思い出す
自分のポジティブな経験を思い出してみましょう。充実感を得た行動やポジティブな経験を思い出し、自分にも誇れる部分があることを思い出しましょう。またポジティブな思い出につながる場所に出かけて、自分の自信を少しずつ回復するのもいいでしょう。

予防⑥反芻思考に名前を付ける
自分の反芻思考に名前を付け、少し距離を置いて反芻思考を観察できるようにしましょう。例えば、「同僚の嫌味を聞いた途端、『〇〇ちゃん』が出てきた。自分は悪くないのに、『お前の能力が低いからだろ』と責めてきているよな」などと、名前を付けた反芻思考の行動を言語化できると、反芻思考に飲み込まれる可能性が下がります。

ここまで反芻が起きる前に実行できることをまとめました。ここからは反芻思考に捕らわれているとき、それを振り払う方法について書いていきます。

対策①気晴らしをする
料理や簡単なゲーム、手芸など、身体を動かす気晴らしをしてみましょう。このとき大切なのは、なるべく慣れていないものに挑戦することです。反芻思考に悩んでいる人ならわかると思いますが、習慣化しているような気晴らしは反芻思考を呼び寄せてしまいます。
例えば手元を確認しなくても進めることができる編み物などは、編みながら反芻思考にハマってしまう可能性があります。一方、同じ編み物でもやったことのない編み方だと、手元に集中する必要があり、反芻思考に捕らわれることがありません。

対策②自然の中を歩く
米国のジャーナリストであるファーン・シューマー・チャップマン氏は、自然の中を90分歩くことで反芻思考が減ったという実験結果を紹介しています。自然の中を気持ちよく歩いてみましょう。

対策③友達と会う
仲の良い友達と会ってみましょう。気晴らしになるばかりではなく、反芻思考を断ち切る視点を与えてくれるかもしれません。また反芻思考は孤独感を増幅することがあるので、そうした感情にもプラスに働く可能性があります。

今日は反芻思考への対策をまとめました。ついつい過去のことを考えてしまう人は試してみてください。しかしツラさが続くようであれば、無理せず精神科医などの専門家に相談しましょう。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「12 Tips to Help You Stop Ruminating」(Jennifer Litner/healthline)/「10 Ways to Stop Ruminating」(Fern Schumer Chapman/Psychology Today)

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