セールスを担当していと、営業成績を上げるにはどんな商品でもPRしなければと思ってしまうかもしれません。でも、売るほうが惚れ込んでしまう商品もあれば、「これ、何で開発したの?」と思ってしまうものもあるはず。
フレーミング効果をうまく使えば、商品価値は確実にアップします。魅力に乏しいと感じる商品も、自信を持って営業できるようになれるはずです。
- 正直、売るのにモチベーションが上がらない商品ってない?
- 人はフレーミング効果から逃れられない
- 商品ごとに、ポジティブなフレームを考えてみる
- 報道のフレーミング効果研究
- 自分もフレーミング効果に惑わされてない? 日常を振り返るのが大事
正直、売るのにモチベーションが上がらない商品ってない?
「どうしてこの商品を売りたいと思ったんだろう……」と頭を抱えてしまう商品は、セールスマンであれば一つや二つあるかもしれません。だからといって、制作部署や発注部署と仲が悪くなってしまうというのでは困ります。
そういう商品は、あえてお客様に紹介しようとしないため、パンフレットはカバンの奥深くに詰め込んでしまいがちです。そしてそのうち、存在を忘れられ、ますます売れなくなって……。そんな状態はぜひ避けなければなりません。
どんな商品でも、自信を持って売るのが営業の使命です。では、どうしたら売りやすくなるのでしょうか。ヒントは、心理学にあります。フレーミング効果を上手に使って、商品価値を引き出しましょう。
人はフレーミング効果から逃れられない
フレーミング効果とは、ある枠組み(フレーム)を利用することによって、あらゆる物事の捉え方が異なってくる心理現象をいいます。例えば、難しい手術を受けるかどうか迷っているときに、「失敗が5%の手術」と言われるのと「成功率95%の手術」と言われるのでは、どちらが「受けてみよう」という気になるでしょうか。
多くの人は、成功率の高い手術であると感じられる「成功率95%」に魅力を覚え、手術を決意することでしょう。しかし、実際には「失敗が5%」と、ほぼ意味が同じです。このように、同じ事実であっても枠組みを変えることで印象がガラリと違ってしまい、人の選択に影響を及ぼすのがフレーミング効果です。
商品ごとに、ポジティブなフレームを考えてみる
例えば、良い品物ではあるものの、生産ラインが安定しない、またはコストパフォーマンスが悪いことから、あまり多くは生産できない商品があるとします。お客様には、メリットもデメリットもそのまま伝えてしまいがちですが、「こういった理由であまり多くは作れないんです」とネガティブ面をことさら強調する必要はありません。それよりも、「希少性の高い品物です」と、その「少なさ」をポジティブに宣伝したほうが、商品価値は上がります。
このように、損失や欠点、難点をそのまま表現するのではなく、また隠してしまうのでもなく、利点を大幅に強調したり、欠点を利点にうまく変換して表現を変えたりすれば、フレーミングの切り替えが可能になります。自分が担当している商品はいったいどのように切り取れば売れるのか、考えてみましょう。
報道のフレーミング効果研究
社会心理学では、とくに報道におけるフレーミング効果の研究が盛んです。心理学者のアイエンガーは、報道が呈示する情報の枠組みによって、視聴者に異なる印象を与えると説きました。彼が行った心理実験では、不況を報じるときに、経済指標や識者の声などを使って俯瞰的に報道するのと、現場の生の声に焦点を当てるのとで、視聴者に与える影響がどのように違うのかが示されました。
結果、俯瞰的な報道を行った際には、視聴者側は不況を大きな社会的問題と受け止め、行政がしかるべき対応をとるべきとコメントしました。一方で、不況が感じられる失業現場の生の声を拾う報道を見せたときには、「失業は個人の問題で、各々が何とかすべき」という意見を示す視聴者が多かったのです。
このように、同じ社会問題でも切り取り方が全く違えば、かなり異なるインパクトを与えることになります。フレーミングは、ときに私たちにとって重要な何かを見失わせてしまうほどのものであることを、アイエンガーは明らかにしました。
自分もフレーミング効果に惑わされてない? 日常を振り返るのが大事
生活を送るうえで何よりも大事なはずの情報が、その切り取られ方によって異なる印象を持ち得てしまうとしたら、ちょっと恐ろしいですね。自分もフレーミング効果に惑わされていないかどうか、日常を振り返ってみることが大事です。とくに報道については、一つのネットニュースを見て判断するのではなく、複数の異なる媒体をチェックして総合的に判断すれば、より安全です。逆にメディアによって、切り取り方が大きく違うのがわかるでしょう。
そして日常の買い物においても、「この広告はどんなフレームを使っている?」「自分はどんなフレーミング効果に影響された?」と、日々考えながら行うと新しい発見があるかもしれません。自分の仕事の参考になる部分も、大いにあるでしょう。会社帰りのコンビニで、休日のレジャーで、フレーミング効果をちょっとだけ意識してみると、きっと上手な買い物にもつながりますよ。
参考:『社会心理学』池田謙一ほか、有斐閣