落込んだときこそ確認したい考え方のゆがみって?

落込みやすいと感じたとき、自分はなんて弱い性格なのかなと考えてしまうこともあるでしょう。でも、落込みやすい原因は考え方もしれませんよ! 今日は、ネガティブな感情を増幅させる思考バイアスと、その対処法についてまとめます。

  • 落ち込んでいるのは考え方が問題だった!?
  • 代表的な5つのバイアス
  • 思考バイアス4つの対策

落ち込んでいるのは考え方が問題だった!?

ちょっとしたことで落ち込んでしまい、なかなか気分が晴れないことに悩んでいる人もいるでしょう。友達などから「気にし過ぎじゃない?」と言われても、落込んでしまうのは仕方ないと感じてしまうもの……。
でも、その落ち込みがネガティブな感情を増幅する「考え方」のせいだとしたら? 

感情と思考はリンクしています。互いに影響を与え合うものです。しかし人は落込んだときに、感情だけにスポットライトを当てがちです。例えば「先輩から仕事が遅いと怒られた。きっと自分は会社のお荷物だ。もう泣きたい」と思ったとき、「怒られたこと」と「泣きたい気持ち」だけに注目してしまうのです。しかし本当に問題なのは、「きっと自分は会社のお荷物だ」という考え方ではないでしょうか? 
例えば同じシチューエーションでも、次のように考えられたら落ち込まないかもしれません。
「先輩から仕事が遅いと怒られた。今日は先輩の機嫌が悪くて、みんなが当たられている。気分が悪いから近づかないようにしよう」

じつは落ち込むような出来事があったとき、ネガティブな感情を増幅する思考パターンを心理学が明らかにしています。また、そんな考え方をしないための対策も見つかっているのです!

代表的な5つのバイアス

ネガティブな感情を増幅させる考え方は、「思考バイアス」と呼ばれるものです。「バイアス」とは偏りやゆがみを指すので、思考バイアスとは考え方のクセのようなもの。

落込む原因が発生すると、自動的に頭に働きかけ、より落ち込ませるように誘導してしまうのです。しかも多くの人が感情ばかりに注目してしまうこともあり、こうした思考のゆがみに気付かないといったことが起きてしまうのです。

つまり気分を落ち込ませる出来事があったときに、思考バイアスを警戒し、そのゆがみの罠にはまらなければ、そこまで落ち込むこともないというわけです。

では、さっそく気持ちを余計に落ち込ませる考えた方を紹介しましょう。

①マインドリーディング
他人がどう思っているのかを推測することは、人間関係において大切でしょう。しかし本当にこちらが推測した通りかどうかはわかりません。恋愛に疎い人の恋愛コメディーには、相手の気持ちを推測する難しさが描かれています。私たちは相手の気持ちを実生活でも推測しますが、その推測を絶対だと思い込まない余裕があります。ところが落ち込むと自分の推測は真実だと思うようになってしまいがちです。

例えば、先程示した先輩に怒られたケースなら、怒られたときに視線を落とした別の同僚の姿を見て、「自分を軽蔑している」と思い込んでしまったりするのです。本当は日によって態度が違う自分の目の前にいる先輩を軽蔑しているだけかもしれないのです。

勝手に相手の思っていることを推測して真実だと思い込むパターンは、落込んでいるときに周りの人が励ましや安心感を与えてくれないケースでも起きやすいので、注意が必要です。

②過度な一般化
たった一つの失敗で、すべてが台無しだと考えてしまうバイアスです。入力ミスを発見してプロジェクトを進める自信がなくなったり、いつもの電車に乗り遅れて一日が何もうまくいかないと感じたり。

またネガティブな出来事が頭の中でパターン化して、毎回起きると考えてしまうケースもあります。「試験に落ちた。大事なときに私はいつも失敗する」といったつぶやきは、過度な一般化の一例です。

③感情的な推論
感情を事実だと思い込むゆがみです。例えば、面接官の態度に腹がったことで、「ここは良い会社ではない」と結論付けるパターンです。試験を受けたときにイマイチだと感じて、不合格だと思い込むといったことも感情的な推論です。

「私がこう思うから真実だ」という思考パターンだけを読むと、「そんな思い込みあるのかな?」と感じるかもしれませんが、感情に影響を受けての真実だと思い込むケースは少なくありません。

④白黒思考
これはグレーゾーンがない思考です。白でなければ黒という思考なので、成功者以外は完全な敗北者といった思い込みを招きます。こうした考え方は、現実のハードルを高くします。ちょっとしたミスが自分にとって取り返しのつかない失敗となってしまうので、落込みが深くなるのは仕方ないでしょう。

また、この思考は行動の回避にもつながります。例えば「今日は20分しかないから運動できない」といったケースです。いつものルーチンが1時間だとしても、20分間だけ運動すればまったく運動しないよりはプラスです。しかし完全な行動ができそうもなければ、一歩を踏み出せないのです。結果、現実への対処を遅らせる原因にもなります。

⑤べき思考
「~すべきである」「~でなければならない」という過剰な期待は、現実とのギャップを生み、ネガティブな感情を増大させてしまいます。

この思考は完璧主義とも結びついているうえに、非現実的な目標設定を招きがちです。結果的に身動きが取れなくなり、あるべき自分の姿と現実の自分とのギャップに悩んでしまうのです。

思考バイアス4つの対策

このような思考への対処法を解説していきましょう。

①バイアスに気付く
最初にすべきことは、バイアスに気付くこと。落ち込んだときに、思考バイアスが入っていないか確認してください。今落ち込んでいるのは、もしかしたら考え方がゆがんでいるからかもしれないという意識が、思考バイアスに気付く第一歩となります。
ただ感情が高ぶっているときに気付くのは難しいこともあるので、感情が少し落ち着いてから振り返り、それを繰り返すことでバイアスに気付きやすい自分になりましょう。

②事実と思考と感情を分ける
人が落ち込んでいるときには、その発端となる出来事があり、それを解釈して、感情が揺れているケースが多くあります。この解釈にゆがみがあると、ネガティブな感情が大きくなってしまうのです。

そこで起きた事と今の感情、その解釈を分けます。
「先輩から仕事が遅いと怒られた。きっと自分は会社のお荷物だ。もう泣きたい」の例だと、「怒られた」ことは事実です。「泣きたい」は感情。その間の「会社のお荷物」が解釈です。この解釈の中に思考バイアスが入っているときが要注意です。

さて、バイアスだと気づきにくいケースもありますので、言葉に特徴が表れやすい「過度な一般化」と「べき思考」の特徴を書いておきましょう。
「みんな」「いつも」「絶対」が入っている解釈は、「過度な一般化」である可能性が高く、「~すべきである」「~でなければならない」といった思考は「べき」思考です。

さらに、この拾い出した思考バイアスに名前を付けると、次に登場した時にも気づきやすく、やや冷静な対処がしやすくなります。例えば、他人の気持ちを読み過ぎるマインドリーディングの思考に「占い師」と名付けます。そうすると「きっとあの人は私に怒ってる」と考えたとき、「また占い師がしゃしゃり出てきていないか?」と思えたりするのです。「占い師のウソで落ち込む前に、しっかりと状況を確認してみよう」と考えられれば、思考バイアスのワナから逃れることができます。

③信頼できる人にバイアスを指摘してもらう
思考バイアスはなかなか自分で気づきにくいものです。そこで自分が陥りやすいバイアスが絞り込めたら、そのパターンに入ったときに信頼できる人から指摘してもらえるようにしましょう。愚痴を言い合っている友人などに指摘してもらえれば、ムダに悩む必要がなくなります。

④マインドフルネスに取り組む
毎日決まった時間に自分の感情に注意を向けるようにマインドフルネスを行えば、バイアスをより客観的に捉えられる可能性が高まります。継続が難しいとも言われるマインドフルネスですが、落込みがちなら試してみるのもいいでしょう。

今日は落ち込みを激しくする思考バイアスについてまとめました。落ち込みやすい人は、ちょっと自分の考え方を見直してみましょう。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:『メンタルマネジメント大全』(ジェリー・スミス/河出書房新社)/[
15 Steps To Get Rid Of Negative Thought Patterns」(Forbes)/「Five common thinking traps and how to avoid them」(Brianna Hoge/UAB News)

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