「バイトテロ」の不適切動画について心理学的に考えてみた

最近、さまざまな企業で問題となっている、アルバイトによる不適切動画のネット投稿。問題を引き起こしたアルバイトの心理と事件の対策を探るために心理学を調べてみました。

  1. これは青年期のいたずら?
  2. 群衆倫理で暴走した?
  3. 罪悪感による抑止力が高い

これは青年期のいたずら?

飲食のチェーン店やコンビニエンスストアのアルバイトが、SNSなどに食材をゴミ箱や口に入れて戻すといった動画を投稿。ネット上で大騒ぎとなり、企業も対応に追われる事態となっています。

そこで問題に関連する心理学の論文や書籍を読んでみました。

まず注目したのは投稿した人たちが、いやに楽しそうなこと!

笑いながらしらたきを口に入れた後に踊っている姿などは、心底楽しんでいる様子だったのです。とすれば、これは「いたずら」なのかなと考え、心理学で青年期のいたずらの心理を探ってみました。結果『子どもの発達心理』(波多野完治 著 国土社)に、次のような記述を見つけました。

「青年期のいたずらは、他人にはたらきかけることによって、他人の心のうごきを知ることを目的とする」

しかも尊敬されるような人物はいたずらの対象にならないとも書いているのです。

こうした発達心理の観点からいえば、いたずらされた企業へのアピールが多少なりとも含まれていたということになるのかもしれません。

報道対策アドバイザーとして活躍する窪田順生氏も「『バイトテロ』は訴えても抑止できない、3つの理由」という記事の中で、問題を起こしたバイトへの罰則を強化しても事態を悪化させるだけで、本当に効果があるのは「賃金アップだ」と明言しています。

賃金などに不満があり、いつ辞めてもいいと思っているからこそいたずらを仕掛ける。「尊敬」までいかなくても、勤め続けけたいと思わせれば、こんないたずらも起きないというわけです。

これは確かに納得できる説明とも言えそうです。

実際、一連の騒動を取り上げたNHKの『クローズアップ現代』では、問題を起こしたアルバイトの声として「クサクサしていた」といった声も上がっていました。

大手コーヒーショップチェーンでは、スタッフの教育投資のために商品の値上げも実施しています。問題を起こさないスタッフを集めるためのコスト負担を、消費者がどう考えるのかが今後必要になってくるのかもしれません。

群衆倫理で暴走した?

とはいえ『クローズアップ現代』で報じられたアルバイトの発言は、「深く考えていなかった」「ふざけているつもりだった」「仲間内で盛り上がると思ってやった」というような、かなり軽いノリの声が大半でした。

この状況は渋谷ハロウィンなどでの大騒ぎと一致するとも感じます。

「ハロウィン」に代表される非日常の「お祭り」で問題となるのが、群集心理です。人が多くなるほど匿名性が増し、感情が伝染しやすくなる現象です。興奮状態の集団は、他から白い目で見られてもヒーローのように感じてしまい、より過激な行動にはしってしまいがちです。

今回、問題となった動画は、インスタグラムの機能である「ストーリーズ」にアップされたものです。24時間で消える動画ということもあり、仲間内で楽しむものとして撮影されたのでしょう。仲間内の群集心理がネットを介して小さな「祭り」を生み出したのかもしれません。

こうした「お祭り」状態になった集団を、冷静にすることはなかなか難しいようです。基本的には群集心理が起こる前に、小さな問題行動をしっかりと把握し注意することが重要なようですので、アルバイトだけではなく管理できる社員などの存在があれば、こうした若者の「祭り」も抑制できる可能性が高いでしょう。

ただ一連の問題が起きた企業の多くは、人手不足と価格競争でギリギリの経営を続けている企業のようです。管理できる社員を置けるほどの余裕を持てるのかは、大きな課題といえるでしょう。

罪悪感による抑止力が高い

罰則強化もダメ、コストがかかる対策も立てにくい。それならアルバイト自らが行動を規制するには、どうしたらいいのかを調べてみました。

見つけたのは、岩手県立大学の田村達准教授の論文(「社会的行動・規範逸脱行動の抑制に関する探索的検討」)でした。

この論文は、悪いことをしようとしたときに、どうして思いとどまったのかを学生のアンケートから分析したものです。結果、被害者の視点を持っているかどうかが抑制ポイントの1つにあげられていました。そして特定の被害者がいるケースの方が、行動を抑制するケースが高いこともわかりました。つまり誰が食べるかわからないコンビニなどの食品は、被害者を思い描きにくいため、自分で規制することが難しくなりそうなのです。

また悪事を働こうとしたとき思いとどまった最大の理由が「罪悪感・嫌悪感」だったことから、悪ふざけがどれだけ悪いことで、その行為がどれだけの人を傷つけ自分自身も傷つけることになるかを、当人が理解できるのかが重要なポイントだとわかりました。

例えば一緒に居た仲間や働いている店、損害賠償を請求される可能性のある親、あるいはお客様に申し訳ないと思えば、自ら悪ふざけを止めることができるのです。

改めて調べてみると、防止対策も店舗経営と密接に結びついていることがわかりました。

バイト料の値上げはもちろん、監視する社員を置くことやアルバイト教育の費用なども、すべてコストに跳ね返ってきます。徹底的なコスト競争で企業が生き残りをかけるという経済のあり方が、否定されようとしているのかもしれません。

大手コンビニチェーンでは、「年間100件近くもアルバイトにより不適切なSNS投稿がある」という報道もあり、企業としても対策に本腰を入れざるを得ない時期にきているのでしょう。今回の事件でクローズアップされた「損害賠償を含めた法的処置」が、今度の「バイトテロ」にどれほどの抑止力となるのかは注目しておく必要がありそうです。

参考: 「『バイテロ』は訴えても抑止できない、3つの理由」

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