「あの有名人と同じ大学を出てるんだよね」「あのスポーツ選手が親戚でさ」と、知り合い自慢をする人がいますよね。そんな話題が出たとき、戸惑ってしまうことってありませんか。「別にあなたが偉いわけでもないし……」と言いたくなりますが、成功した他人との結びつきをアピールする人は、いったいどんな心理状態なのでしょう。
- チャルディーニの服装実験って?
- 自信のない人ほど栄光浴を利用したがる
- ひたすら「すごい」とホメてOK!
- ときには栄光浴を自らコミュニケーションに利用しても
- 親しい人の栄光浴が気になったなら、肯定して自信を高めてあげて
チャルディーニの服装実験って?
実は、成功者とのつながりを宣伝する状態は、心理学の分野で「栄光浴」というきちんとした名前がついています。「栄光欲」という欲求ではなく、他人の栄光を浴びる「栄光浴」です!
栄光浴に関する心理実験とともに、ひたすら栄光浴を利用しようとする人への対処法をご案内しましょう。
心理学者のチャルディーニは、1973年のフットボールシーズン中に、7大学の学生の服装について観察しました。毎週同じ曜日の同じ授業において、自分の大学が特定できる服を着た学生がどれだけいるかをチェックしたのです。大学が特定できる服とは、大学名入りのシャツや校章、エンブレムを含んだ服を指します。
すると面白いことがわかりました。自分の大学がフットボールの試合に負けた後よりも、勝った後のほうが、大学を特定できる服装を着用している学生数が明らかに多かったのです。勝利チームと自分とのつながりをアピールしようとして、服装を選んだことが考えられます。
この結果は本当に栄光浴が作用したものなのかを特定するため、後日さらに電話取材による実験が行われました。結果、確かに栄光浴現象が確認され、さらに栄光浴現象が顕著に起こるには「個人の失敗」と「他者からの評価の認知」が作用していると指摘されました。
自信のない人ほど栄光浴を利用したがる
チャルディーニの実験からは、自分が失敗したという意識が強いとき、また他者からの評価が低いと感じているときに、人は栄光浴を利用する傾向があることがわかりました。つまり、自分に自信のない状態であればあるほど、人は栄光浴を利用したがるということです。
他人の権威をかぶって自分を大きく見せることを、日本では「虎の威を借る狐」と言い、また他人に便乗することを「人の褌で相撲を取る」と言います。栄光浴のみっともなさは昔から認知され、また自信のなさを隠すための手段であることも、鋭く見破られてきました。
ひたすら「すごい」とホメてOK!
栄光浴を利用したがる人に会ったら、ひたすら「すごい」とホメましょう。ほとんど他人に近い人物を自慢するのは、自分に自信がないことの表れです。その人は、他者からの評価を最も求めています。よって返事は「すごいですね!」が正解なのです。
ただ、その後の会話の展開には注意を要します。著名人とどう知り合いなのか、会ったことがあるのかなど、関連するエピソードを求めるのはあまりおすすめできません。良く知りえない著名人の栄光に浴したいと考えている人は、言葉に詰まってしまうからです。そして、栄光浴によって得たいっときの自信はだんだんしぼんで行き、言葉数は少なくなります。あなたは会話を発展させよう、盛り上げようと必死でも、相手のテンションは下り坂です。
ときには栄光浴を自らコミュニケーションに利用しても
栄光浴への欲望は、多かれ少なかれ誰にでもあるものです。出身大学が駅伝で優勝したら素直に嬉しいし、地元から売れっ子アイドルが出たら応援したくなりますよね。こういった感情を、ときにはコミュニケーションをとるためにさりげなく活用するのもいいでしょう。
例えば初対面の人の生まれ故郷や出身大学がわかった場合、「●●といえばあの有名人が出たところですよね!」「●●大学の●部といえば優勝常連校ですね」などと話してみましょう。相手は自分自身が評価されたようで嬉しくなります。そのわりに直接評価を下しているわけではもちろんないため、当たり障りのない会話の糸口としてかなり有効です。
親しい人の栄光浴が気になったなら、肯定して自信を高めてあげて
自分の親や恋人など、親しい人の栄光浴が気になってしょうがない人もいるでしょう。周りから見て行き過ぎと感じるほど栄光浴を利用しているなら、「みっともない」とあきれる前に、メンタル面でサポートしてあげるのが大事です。
自分に自信のない人ほど著名人との結びつきに固執するのですから、自信を高めてあげるのが有効になります。「あなたは、あなた自身でいるだけで素晴らしい」と、メッセージを送ってあげましょう。気をつけなければならないのは、「あなたは●●だからすごい」というとき、外面的な理由を選ばないことです。あくまで内面性を評価し、自己評価を高めていってもらえば、栄光浴を頻繁に利用することは次第になくなっていくでしょう。
参考:対人社会心理学重要研究集6 p.147~