目標設定が成功に導くとは、よく言われています。しかし目標設定は幸福にも高い関連性を持つことがわかってきました。そこで不幸にならない正しい目標設定のやり方を解説していきます。
- 目標の基礎となる「SMART」
- 勉強時間をつくってる?
- 幸福に感じる目標設定って?
目標の基礎となる「SMART」
目標設定の有名なルールの1つは「SMART」でしょう。これは目標を設定するときの方法を簡潔に示したものです。
【S】(Specific)具体的であること
目標は具体的である必要があります。スローガンのようなものではなく、目標までの道筋がわかるような具体性が必要です。
【M】(Measurable)測定可能であること
達成したのかわからないようなものは、目標にしてはいけません。
【A】(Achievable)達成可能であること
願望に満ちた目標は、すでに目標とは呼べません。頑張っても達成できないと感じる目標では、モチベーションも上がらないからです。
【R】(Related)最終目標につながっていること
目の前の具体的で達成可能な目標が、大きな目的や意義につながっていることが重要です。目の前の目標をクリアした先に、自分の希望や願望が見えるようにしましょう。
【T】(Time-bound)期限があること
目標は達成期限が設定されていないと、先延ばしされてしまいがちです。いつまでに終わらせるのかをしっかり決めましょう。
この5つは目標を設定するときの基礎となります。ただし「SMART」を守っていれば、きちんと目標を達成できるわけではありません。じつは目標設定には、ちょっとした落とし穴があるのです。
勉強時間をつくってる?
目標設定に大切な2つのルールを説明しましょう。
【ルール①】
目標設定するときは、パフォーマンス目標とマスタリー目標のバランスに気を付ける
例えば、「新規商品の受注を1年間に2割増やして、社長賞を獲得しよう」と計画したとします。まだ参入している企業も少なく、無理な目標でもなさそうです。しかし各社にアポを取って営業しても、一向に成績が上がりません。見返しても「SMART」には問題がなさそうです。
問題は「パフォーマンス目標」だけを定めたことでした。あまり聞いたことがないかもしれませんが、パフォーマンス目標は、自分の能力を他者から評価されることを目指す目標です。
パフォーマンス目標は、適正な能力を持った人が掲げるとプラスに働きますが、能力が低いとマイナスに作用してしまいます。上記の例で言えば、商品知識や同業他社の動向、営業トークのスキルといった営業に必要な知識や能力が足りていないのでは、社長賞を狙うこと自体無理があります。しかもパフォーマンス目標は、外部から良い評価を得たい一方で、悪い評価は避けたいという目標の特性があるため、とりあえず短期的な結果だけを求めることにつながりかねません。
例えば強引に売りつけて、これまでの信頼関係を損なってしまうといったことが起きてしまうのです。
こうしたとき必要になるのが、自分の能力を伸ばして熟達することを目指す「マスタリー目標」です。高いレベルの目標を達成するためには、学ぶ時間が必要になります。他人からは見えにくい地味な時間ですが、長期的にはマスタリー目標のクリアが、パフォーマンス目標の達成につながります。
もちろんマスタリー目標ばかりに集中して、パフォーマンス目標をいっさいクリアできないのも問題です。気を付けましょう。
幸福に感じる目標設定って?
【ルール②】
達成可能な目標で幸福になる
自身の目標の重要性と達成の可能性、幸福感について、18~92歳の973人をスイスで調査しました。この調査の興味深いところは、1回だけではなく2年後と4年後に、同じ人たちに再調査したこと。
結果、目標達成が可能だと感じていた人ほど幸福だと判明しました。しかも幸福感は目標達成自体と関係がなかったのです。目標が達成できなくても、目標が達成できそうだと思えるだけで幸福だったというわけです。
この結果について、調査を実施したバーゼル大学の研究者は、人生をコントロールしているという感覚が、前向きな感情を生み出すのだろうと分析しています。
目標は年齢によって変わっていきます。
この調査でも、若い参加者は「個人の成長」「社会的地位」「社会的関係」「職業上の進歩」を重要な目標としていました。一方、年配の参加者は「社会的関与」と「健康」がより重要だと答えています。ところが目標と幸福の関係には年齢が関係なかったのです。
私たちは実現可能と思えるような目標を設定すべきです。やや実現な難しいと感じるような大きな目標がある人は、目標達成までの道筋を描き出して、達成可能な目標に切り分けて書き出しましょう。
今日は目標設定のやり方について考えてみました。ぜひ幸福な目標設定をしてみてください。
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参考:「Setting attainable goals makes us happier, even if we fail」( Alexandru Micu/ZME SCIENCE)/「Learning versus performance goals: When should each be used?」(Gerard Seijts&Gary P. Latham