仕事のときは、本当の自分ではないと感じている人も少なくないかもしれません。実際は穏やかな性格なのに厳しい姿勢を崩さなかったり、実際は内気なのに外交的に振る舞ったり。そんな人にはちょっと注意してもらいたいことがあります。まとめておきましょう。
- 性格を決定する要素は3つ
- 性格を変えた自分は褒めていい
- つくった性格は負荷がかかる
性格を決定する要素は3つ
「自然体」や「ありのままの自分」が、メディアなどでもてはやされることがあります。確かに、そんな生き方に憧れるのもわかります。しかし仕事とプライベートで、あるいは恋人と一緒にいるときに性格が変わってしまう人もいることでしょう。人によっては、どれが本当の自分なのか迷ってしまうかもしれませんね。
じつは性格を決定する要素は、3つあることがわかっています。
「遺伝」「社会」「個人」です。
「遺伝」は言うまでも持って生まれたもの。もともと備わった性格です。内向的とか外交的といった性格なども、生まれたときたら備わっている傾向性があるそうです。
「社会」は、社会的な要請に従って現れる性格です。例えば米国では積極的な性格が評価されるため、そうした社会にもまれていくうちに積極的な人が多くなるというわけです。
「個人」とはその人の計画や目標のための現れる性格です。仕事になると、強気になるとか、協調性が高まるといったことは、「個人」の性格が強く出た結果です。
性格を変えた自分は褒めていい
「自然体」というのは、多くの場合、「遺伝」的な性格を指すのでしょう。実際、遺伝的な性格のまま過ごせる環境だと、幸福を強く感じることが心理学の研究からわかっています。
では、「ありのまま」ではいられない自分は恥ずかしいことなのでしょうか?
じつは性格を変えて社会に対応するのには、理由があります。ハーバード大学やオックスフォードで教鞭をとったブライアン・R・リトル博士は、著書で次のように書いています。
「人間は、生まれ持った性格に従って行動するときに力を発揮することもありますが、愛情やプロ意識から普段と違う行動をとることで、個人や職業人としての責任を果たそうとするのです」
環境に合わせて性格を変える理由の根本にあるのが、誰かのためにといった「愛情」や、仕事のためといった「プロ意識」だと考えれば、性格を変えて環境に対応していることは、ほめられることでしょう。家族や恋人のために穏やかな自分になる。仕事のために外交的な人物を演じる。どれも誇ってもいい行動なのです。
その意味は、自然体でいられない自分を恥じることはありません。環境に対応している自分を褒めていいのです。
つくった性格は負荷がかかる
ただし、遺伝的な性格を変えることは、それなりの負荷がかかっていることは覚えておきましょう。そして重要なことは、本来の自分に戻れる時間と場所を確保することだそうです。外交的な自分を演じているのなら、独りで過ごす休日を大切する必要があるでしょう。
ブライアン・R・リトル博士の著作には、協調的な性格をつくり上げて生活している人が、荒っぽいホッケーの試合でストレスを発散する話が載っていました。
「じゃあ、その荒っぽいホッケーの試合に出場して、思いっ切り暴れることが、あなたにとっての回復の場所になるかもしれませんね」
ありのままの自分でないことを恥じる必要はありませんが、ありのままの自分に戻れる時間を確保しないと、ストレスが溜まってしまいます。もし、素の自分に戻れる場所を見つけていないなら、これ以上ストレスを溜めないためにも、ありのままの自分でいられる場所を探してみませんか? もっと快適に暮らせるようになるかもしれませんよ。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』(ブライアン・R・リトル/大和書房)