失敗が怖いのは当たり前でしょう。通常、失敗など経験せずに成功したいものです。では、どうすれば「失敗は成功の元」に変えたり、あるいはエジソンのように失敗を恐れないようになるのでしょうか? 失敗にめげない心理について調べてみました。
- 失敗が怖くなくなる!
- 失敗を「悪い」と認識しないコツ
- 強制された行動を楽しくするコツ
失敗が怖くなくなる!
発明王のエジソンは、「失敗すればするほど、我々は成功に近づいている」と語ったと言われています。確かに失敗を糧に成功に近づくのは、ある意味で「成功への王道」でしょう。モータースポーツなどでは敗因の分析がとても重要視されていますが、それは数少ない本番のレースに同じ失敗で負け続けないためです。
そして多くの人は失敗をしっかり分析することが、とても重要だとわかっています。ただ大きな問題は、そうした分析をする気が起きないことではないでしょうか。そもそも失敗した自分の姿を詳細に思い出したくないでしょうし、さらにどんな言動が失敗につながったのを明確にしたくもないでしょう。それこそ「いやなことは寝て忘れる!」といった行動を取りたくなるのが普通です。
しかし近年の脳科学は、「失敗」を「成功の元」と考えるための条件があることを教えてくれています。
失敗を「悪い」と認識しないコツ
そもそも「失敗」で落ち込んでしまうのはどうしてでしょうか?
それは失敗を「悪いこと」として認識しているからです。実際「悪いこと」として認識していない課題は、失敗しても落ち込まないもの。ゲームなどで間違えた動きをしても気落ちしないことも多いでしょう。趣味であれば、失敗が楽しいといった体験は、多くの人が経験しているでしょう。
脳には「悪いこと」が起きると活動が低下する部位があります。この部位を測定しながら、ストップウォッチを5秒で止めるゲームを、玉川大学脳科学研究所の松元健二教授が実施しました。すると自己決定権があるように設定された人の脳だけが、失敗を「悪いこと」だと認識しなかったのです。これは人にやらされるのではなく、自分で決定したという認識があれば、失敗を「悪いこと」だと認識しないという脳の働きを示しているそうです。
つまり自分で決めて実行したという意識があれば、たとえ失敗しても「悪いこと」をしたという認識がないので落ち込むもなく、失敗を成功の糧にすることができるというわけです。
また、この実験では自分でデザインを選択した場合は、コンピュータに強制的に決められた場合と比べて、9割以上がポジティブな気持ちだったと回答。ストップウォッチを5秒で止める課題の成功率も、自分で選択した方が高かったそうです。
強制された行動を楽しくするコツ
この実験結果を見れば、仕事でもプライベートでも自分で決めることが、とても大切だとわかるでしょう。とはいえ特に仕事では、自分ですべてを決定することは容易ではありません。上司などから命令されるのはもちろんのこと、たとえ社長になってもお客様からの要望で行動を決定する機会は非常に多くなります。
こうした状態を改善するのに役立つのが、外発的動機付けの分類です。外発的動機付けとは、行動する動機が外部にあるケースですが、それは大きく4つに分かれると言われています。
①外的調整……罰則や成功した場合の賞金によって動機付け
②取り入れ……義務感による動機付け
③同一化 ……自分がするのは当然だと思える動機付け
④統合 ……自分の目的や価値観と合致した動機付け
この4つの分類は、①から④に従って、数が多くなるほどやりがいなど、自ら楽しんで行動する動機付け「内発的動機付け」に近づいていきます。
つまり上司などが言われ、最初は給料のためにやっていた仕事でも、ただこなすだけはなくノルマを達成しようといった義務感が生まれ、さらに自分が仕事をこなすのが当たり前だと感じるようになり、いつの間にか自分が人生の価値観と合った仕事になれば、自ら楽しんで仕事をするのも間近となります。
つまりたとえ誰かに命令されたことでも、自分の価値観と合っているとわかれば、行動する動機が自らの楽しみとなり、自分で決定したかのように動けるのです。
また先にも触れたと通り、自分で決定したと感じられれば、失敗を成功の糧にすることもできます。
つまり命令されたことでも、自分の価値観と合っているところがないのかを、しっかり確認することが重要です。
例えば営業が苦手だといる人が、他人を笑顔にすることが自分の重要な価値観だとしたら、自社製品を使って笑顔になっている人から話を聞いてみましょう。自分の営業が回り回って他人を笑顔にするのだとわかれば、やる気もわいてきますし、失敗も恐れなくなります。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「失敗を成功のもと」にする脳のしくみを解明」(玉川大学)