近年の研究によって、心理とお金の使い方の関係が明らかになっています。ちょっとしたことで財布の紐が緩む場合もあれば、懐具合によって購入した商品の満足度が下がる場合もあります。そのようなお金と心の関係について、ボトムダラー効果を中心に紹介します。
- 恋人との食事は豪華でも気にしないのは?
- ボトムダラー効果って?
- 節約への活用も
- 満足度を下げない4つの対策
恋人との食事は豪華でも気にしないのは?
毎月の食費はキッチリと決めていても、恋人とは豪華な食事を食べてしまう。これはどうしてでしょう? それは恋人との食事が「食費」ではなく、「交際費」など別のカテゴリーに分類されているからです。人は心にいくつも財布を持ち、予算を立ててカテゴライズしています。そのため日常生活と別の分類だと、ついつい財布の紐が緩んでしまうのです。
旅行で必要のないお土産などを買ってしまうのも、「心の会計」と呼ばれる心理的なカテゴライズと関係しています。じつは旅行だけではなく、遊びの時やギャンブルでも散財しがちなことが知られています。
ボトムダラー効果って?
こうした「心の会計」に関連して、マーケティング面から注目されている心理現象に「ボトムダラー効果」があります。これは最後に残ったお金で購入した商品やサービスの満足度が低下するといった現象です。
例えば給料日の直後に行った食事に行った店と、給料日前に行った店では、同じ料理でも満足度が違ってしまうのです。そのため新規顧客が継続的に購入してくれるのかの大きな分かれ道になるそうです。
ボトムダラー効果をもう少し詳しく解説すると、残りのお金が少なくなってくると、人はお金を使うことに痛みを感じるようになるようです。しまいには購入の喜びよりお金を使う痛みが上回り、お金が無くなることへの不満を商品への不満と考えてしまうようになるとのこと。
そのためマーケティング的には、なるべくお金に余裕のあるときに購入させるよう戦略を立てます。そうすれば財布の紐も緩みやすく、購入後の評価も予算が厳しいときより高まる可能性が高いからです。結果、ボーナス時にバーゲンを開催する店が増えるのです。
節約への活用も
さて、ボトムダラー効果は消費者にとっては、どんな影響を及ぼすのでしょうか?
一番わかりやすいのは、お金の節約でしょう。項目ごとに予算を分けていれば、それぞれに「ボトムダラー効果」が発揮されるので、それぞれの残金が少なくなればお金を使うことへの痛みが強まり、財布の紐も緩みにくくなります。
昔から給料を食費や家賃など項目ごとに封筒に分けて、残金を気にしながら使うと節約するようになると言われていましたが、それはカテゴリーごとに予算を組み、それぞれの予算の残高で使い方が変わるという心理現象を活用したものだったのです。
予算の分類を細かくすればするほど、お金を使うのにストップがかけやすくなります。今は予算ごとの残高を示すアプリなどもあるので活用してみましょう。
満足度を下げない4つの対策
ただボトムダラー効果がやっかいなのは、購入した商品への満足度に影響が出てしまうことです。たとえマンションや旅行のために貯金をしていて、目標額に達したからと購入しても、予算を使い果たしてしまうとマンションや旅行への満足度が下がってしまう可能性があります。
せっかく買い物をしたのに、予算の残高が原因で満足しないのはもったいない! そこでボトムダラー効果を発揮しないような対策を紹介していきましょう。
①給料前にパーティーをしない
結婚などのパーティーをするときは、多くの人の給料前となる20日前後に計画しない方がいいでしょう。「こんな高いお金を払うぐらいなら、地元の居酒屋の方が満足できた」といった感想を持たれかねません。
これが給料直後なら、ちょっと豪華な内装や料理をSNSにアップするなど、みんなが心から楽しめる可能性が高まります。
②商品を定めて貯金しているときは目標額以上貯めてから購入を
目標額まで貯まったから買おうとするのは危険です。当人が意識しなくても、ボトムダラー効果が発揮されてしまう可能性があるからです。購入するのを楽しみに貯金していたなら、購入の喜びをしっかり味わえるように、予算目標額以上に貯めてから購入します。買ったらすっからかんになったという状態を避けましょう。
③予算を細かくし過ぎない
予算のカテゴリーを増やせば、節約の意識は高まりますが、その予算の最後に買った商品の満足度が下がります。
例えば、交際費、娯楽費、衣料関連費、食費、交通費などに予算を分けると、予算の最後に友人と行った店、最後に買ったゲーム、最後に買ったシャツ、給料前に最後の食事、最後のガソリン代といったものが、すべて不満に感じてしまうかもしれません。このカテゴリーを、例えば2つにまとめれば、不満の種は2つに減るのです。
節約と商品への満足はバランスの問題になりますが、商品への満足を維持するといった要素も考えて、予算のカテゴリーを決めましょう。
④クレジットカードに注意
クレジットカードを使うと、お金を使う痛みを感じにくくなることが知られています。そのためボトムダラー効果がなくなるのかというと、そんなことはないようです。
当たり前ですが、クレジットカードにも支払時期はやってきます。そのときに支払いの痛みを感じるわけですが、困ったことに購入した直後ほど購入への喜びがありません。その結果、ボトムダラー効果をより強く感じてしまう可能性があります。
カードの明細を見るたびに買い物を後悔する傾向がある人は、プリペイド式のカードや現金支払いなどを使い、購入の喜びが強いときに支払った方が商品への満足度が高まります。
今日は心理とお金の使い方について紹介しました。ボトムダラー効果の観点から日々のお金の使い方を考えるのも面白いかもしれませんね。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Why do we transfer negative emotions about being broke on items that we purchase?」(The Decision Lab.)/「How to Beat the Bottom-Dollar Effec」(va M. Krockow Ph.D./Psychology Today)