司法も行政もマタハラを許さない流れに

マタニティーハラスメントは、妊娠・出産をきっかけに職場で起こるハラスメントです。雇い止めや解雇なども起きる深刻なハラスメントとして注目されています。そんなマタハラへの裁判所の判断をお伝えします。

  1. 不本意な降格が継続
  2. 「協調性がない」といった理由での降格認めず
  3. 派遣社員の約50%がマタハラ経験

不本意な降格が継続

2015年11月17日、広島高裁の差し戻し控訴審は原告側の逆転勝訴を言い渡し、妊娠を理由に降格したことを男女雇用機会均等法に反すると認めました。

原告は理学療法士として患者宅に出向く訪問リハビリを担当。2004年には副主任となり管理職手当も付いていたものの、第二子の妊娠にともない負担の少ない病院内でのリハビリ担当へと異動しました。このとき不本意ながら降格を受け入れた原告でしたが、育児休業後に復職しても再昇格はかないませんでした。また、病院側は原告の要求に耳を傾けることなく、結局、職場での孤立を招き、復職から2年後には退職せざるを得なくなっています。

「協調性がない」といった理由での降格認めず

差し戻し控訴審では、精神的苦痛による慰謝料も含め、ほぼ請求通りの約175万円の賠償を病院側に命じ、ほぼ全面勝訴となりました。

この控訴審で病院側は、協調性がないなどの原告の適格性を「特殊事情」として主張。しかし判決では一切を退けました。また原告女性が降格を承諾したことについても、「自由意志に基づいていたとの客観的な理由があったとは言えない」と断じています。

2014年10月にこの訴訟の差し戻しを命じた最高裁判決では、「女性労働者の同意」か「特殊な事情」が認められない不利益処分は無効だという判断を示しています。この判断に則った被告側の主張ではありましたが、「協調性がない」といった理由では認められないことが明らかになったといえるでしょう。

ただ最高裁判決では、同意の有無を裏付けるプロセスや、特殊事情の具体例には触れておらず、今後、このようなマタニティーハラスメント(マタハラ)裁判の争点になる可能性が高そうです。

派遣社員の約50%がマタハラ経験

近年、マタハラに対する司法や行政の姿勢は昔と違い、かなり厳しくなってきています。今年10月には時短利用による昇級抑制を「制度利用をためらわせる重大な違反」と東京地裁が断じました。また育児休暇を理由に男性看護師の昇級・昇格を見送った病院にも、昨年7月に大阪高裁が違法判決を出しています。

2015年3月には、厚生労働省が「育児休業の終了から原則1年以内に女性が降格など不利益な取り扱いを受けた場合は直ちに違法」という通知を、全国の労働局に流しました。さらにマタハラ行為について、企業に防止措置を義務づける法改正も検討していると報道されています。

厚生労働省の調査によれば、妊娠・出産経験のある女性のうちマタハラを受けた経験があると答えたのは、21.8%、派遣社員で48.7%にも及びます。今後より立場の弱い派遣社員などへのマタハラについて、状況を改善していく必要がありそうです。

関連記事

【今こそ知っておきたい】労働者が取得できる休暇・休業にはどんなものがある?... 新型コロナウィルスの影響が続いています。長期で会社を休まざるを得なくなった人もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで有給休暇の日数や、特別休暇の種類について知っておきたいという人のために、労働者が取得できる休暇・休業についてまとめてみました。 法定休暇と特別休暇法定休暇の種類特別休...
ハローワークの職業訓練は主婦や無業の人も受けられる?... ハローワークの職業訓練は、「会社員だった人向けのもの」と思っていませんか。雇用保険に入っていなくても、原則無料の職業訓練を受けられる可能性があります。主婦や無業、自営を廃業したなどといった事情のある人でも受けられる求職者支援訓練についてご案内します。 若年無業者、およそ71万人!「公...
失業保険は解雇じゃなくてもすぐに受け取れるってホント?特定理由離職者とは... 解雇以外で会社を辞めたら、すぐには失業保険が下りないのでしょうか?自己都合退職だと3ヶ月は失業給付が下りない失業保険ですが、やむを得ない場合はその限りではありません。特定理由離職者について解説します。 失業保険は自己都合退職の場合、3ヶ月は失業給付が下りない 特定理由離職者とは、雇い...
【ついに始まる】同一労働同一賃金って?キホンを解説、ギモンを解消... 2020年から、「同一労働同一賃金」が始まります。正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇差をなくそうという取り組みで、働き方改革関連法の一つです。基本的なことを理解して、疑問を解消しておきましょう。 なんていう法律なの?どんな内容なの?いつから始まるの?誰が対象になるの?守られなかっ...
雇い止め解決について 2018年あたりから雇い止めの問題がメディアで取り上げられることが多くなりました。 2015年に労働者派遣法が改正されて3年たったからです。そこで過去に雇い止めがどう決着したのかを紐解いてみましょう。 雇い止めの和解解決が難しい雇用問題早く解決したかった労働者 雇い止めの...

働く人の心ラボは、働く人なら知っておきたい『心の仕組み』を解説するサイト。
すぐに応用できる心理学の知識が満載の記事を配信しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です