子どものいじめの構造はこうなってる! 実は、大人の影響が大きい場合も

いじめにより多感な時期の子どもが被害を受けたというニュースを聞くと、ぎゅっと胸が締め付けられます。いじめは永遠になくならないのでしょうか。なぜ起こるのでしょうか。心理学では、人の性格ではなく集団構造に注目し、いじめの構造を解釈しています。心理実験から、いじめの構造を紐解きます。

  1. いじめが発生しやすい権力構造
  2. レヴィンの集団心理実験
  3. 人の性格よりも集団の構造がいじめをもたらす
  4. 子どもが変だと気づいたら、身近な大人の人間関係にも注目したい

いじめが発生しやすい権力構造

「いじめるほうが悪い」「いじめられる側にも問題がある」など、いじめの原因を人の性格やコミュニケーションのあり方に求める議論が後を絶ちません。しかしそれではいじめを当事者個人の問題にしてしまうことになりかねません。

心理学では、集団におけるリーダーシップのあり方が、いじめと強く関連しているという考え方があります。「社会心理学の父」とうたわれたクルト・レヴィンの実験から、いじめの構造を暴きましょう。

レヴィンの集団心理実験

レヴィンは、集団におけるリーダーシップの影響を図るべく、次のような実験を行いました。10歳の少年を5名ずつ、3つのグループに分けます。そして、それぞれのグループに大人のリーダーをつけて工作などの作業に当たってもらいます。

一つめのグループには、「専制型リーダー」をつけました。専制型リーダーは、全ての作業工程を一つずつ指示するだけで、作業の全体像は教えません。さらに特定の子どもに対してひいきを行い、動作の鈍い子には罰を与えます。

二つめのグループには、「民主型リーダー」をつけました。作業の全体像をメンバーに教え、どう作業を進めるのか、誰が何を担当するかは話し合いで決めます。また、リーダーも作業に加わります。

三つめのグループには、「放任型リーダー」をつけました。全てを子どもに丸投げし、相談されるまでは全く手を貸そうとしません。

結果、専制型リーダーが率いるグループには、ある異変が起こりました。メンバーの不満が募り、そのイライラが最も気の弱い子に向けられ、いじめが始まったのです。その子をメンバーから外しても、また別のターゲットがいじめの対象になるだけで、いじめはなくなりません。

一方、民主的リーダーのもとで作業をしたメンバー内の満足度は高く、またいじめも起こりませんでした。放任型リーダーの集団もまた、生産性が他の2グループよりも低いという問題はあったものの、いじめは起こりませんでした。

人の性格よりも集団の構造がいじめをもたらす

「人がある程度集まれば、必ずいじめは起こってしまう」という人もいます。しかし、レヴィンの実験からは、集団そのものが悪なのではなく、集団が専制的な構造を持っているときに、いじめが生じるのだと考察されます。

そして重要なのは、集団の中でフラストレーションが高まったとしても、当のリーダーには不満がぶつけられないという点です。リーダーはいじめの現況でありながらも、いじめが起こっている空間では無傷で済むという不思議な構造になっているのです。

子どもが変だと気づいたら、身近な大人の人間関係にも注目したい

「もしかして、学校にいじめがあるのでは?」と気づいたら、子どもたちを問いただす前に、まずは身近な大人の人間関係に注目してみてください。原因をいくら子どもたちのなかに探っても、答えは見つからないかもしれません。

子どもと先生の関係はもちろん、いじめに加わっていると考えられる子どもが両親との関係でフラストレーションを抱えていれば、それは大きな原因になると考えられます。なかなか関係者の納得のいく解決が難しい「いじめ問題」ですが、子どもだけの関係から起こっているという視点から少し広げることで、解決の糸口をつかめるかもしれません。

参考:『図解雑学 人間関係の心理学』斎藤勇、ナツメ社

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