ダイエットの敵も思われがちな油。しかし植物性や動物性の油によって作られる脂質は三大栄養素のうちの一つであり、食べないのは問題な栄養素です。今回はそんな油について考えてみました。
- 脂質はエネルギー宝庫
- 味がないのに美味しい理由は?
- 消化しないとハマらない!?
脂質はエネルギー宝庫
脂質はエネルギー源です。
タンパク質と糖質が1gで4calのエネルギーを産み出しますが、脂肪は1gは9calと倍以上のエネルギーを生み出すのです。また細胞膜を構成する要素の一つとしても知られています。しかも脂質は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの吸収を助ける働きがあるのです。そのため摂取しないと骨密度の低下や肌荒れを起こしかねないのです。
油を食べることで、幸福感を生み出す脳内物質としても知られβエンドルフィンがでることもわかっています。
龍谷大学の伏木亨教授も、脂肪は
「動物が生きていくための大事なエネルギー源になる成分。その味を際立っておいしくてもっと欲しいと感じるのは、生きていくうえでとても貴重な能力です」
と語っています。
味がないのに美味しい理由は?
そんな油には少し面白い特徴があります。
例えば、味。多くの人が油を付ければ、料理が美味しくなることを知っています。
生野菜に塩コショウ、レモンでだけかけても、やや物足りない味になりますが、これらを油に漬け込んでドレッシングを作れば、味に深みが出ます。イタリア料理が好きな人なら、パンにオリーブオイルを付けて食べるのが好きな人も多いでしょう。
ところが油だけを口に入れても美味しいわけではありません。
そんな油の旨みについて、龍谷大学の伏木亨教授は次のように説明しています。
「油脂そのものの味わいは、いわゆる古典的な味の範疇には入らないと思われる.味とは異なる刺激として脳に伝わると表現するしかない」
なんと油は舌で味を感知されているわけではないというのです。舌で感じる旨みや酸味などとは違うルートで、脳に届くのは驚くしかありません。
消化しないとハマらない!?
もう一つの油の特徴は、取りすぎるとハマる可能性があるということです。
龍谷大学の伏木教授の講演録には、「毎日一定時刻にコーン油をラットに与え続けた。3日目にはラットが研究者の入室時刻にコーン油を期待する行動をとる」と書いてあります。しかし、油にマウスがハマるようになるためには、体内に油が入ったと認識する必要があるらしいのです。消化吸収されない油を与えても、マウスはずっと夢中になるわけではないという実験結果を、伏木亨教授は伝えています。
しっかりとエネルギーに変換される油にだけ、マウスが反応したということからも、生物にとって脂質がどれだけ重要かがわかります。
現在では、美味しいだけに取りすぎてしまいがちな油ですが、バランスの良い食事の中で取っていきたいものです。
<参考>
油脂の嗜好性に関する栄養生理学的研究(公益社団法人 日本農芸化学会)
「スナック菓子、なぜやめられない『寸止めの味』とは」(NIKKEI STYLE)