「健全なる精神は健全なる身体に宿る」とはよく言われますが、実際に身体を鍛えることで脳や心にどんな影響を与えるのでしょうか?そんな疑問に答えてくれる書籍『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョン・J・レイティ/NHK出版)を紹介しましょう。
- アルコール依存も効果
- ついつい携帯ゲームなどに時間を使ってしまう人にも
- 気が散ってしまう人にも
アルコール依存も効果
運動がイライラした気持ちを抑えてくれるといった経験を持っている人は、けっこういるかもしれません。だからといって、忙しい仕事の合間をぬって運動を続けるのは容易なことではありません。
しかしハーバード大学医学部臨床精神医学のジョン・J・レイティ准教授は、著書『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョン・J・レイティ/NHK出版)で、運動をすることでメンタルヘルスの問題が改善されると説いています。
たとえば依存。
本書によれば、2004年にロンドンで行われた研究によれば、10分の運動でもアルコールへの渇望を抑える力があるそうです。この研究によれば、中ぐらいの強度でエアロバイクをこぐと、アルコールへの渇望が劇的に抑えられていたことがわかったそうです。
ついつい携帯ゲームなどに時間を使ってしまう人にも
またタバコについては、次のように書いています。
運動をすると、タバコへの渇望が50分間抑えられ、つぎに一服するまでの間隔が2倍から3倍に伸びる。
にわかには信じがたいほどの効果ですが、この効果もしっかりとした実験の裏付けがあるそうです。
さらに注目したいのは、依存にともなう気持ちの問題に運動が効果あることでしょう。タバコやお酒などの依存の対象を断つと、空虚な気分になるそうです。そうした空虚な心の隙間を、どのように埋めていくのかが問題だとジョン・J・レイティ准教授は書いています。
必要とされる運動量は、当然ながら依存の深刻度によって異なるが、依存を完全に断ちたいのであれば、週5日、30分以上のハードな有酸素運動というのが最低ラインだ。できれば毎日、体を動かした方がいい。運動は前向きなことに目を向けさせ、心を埋めてくれるからだ。
依存までいかなくても、ついつい携帯のゲームなどに大量の時間を費やしてウンザリしてしまうと感じている人は、やや強度の強い運動を試してみるといいかもしれませんね。
気が散ってしまう人にも
著者自身がADHD(注意欠如・多動症)だったこともあり、ADHDに対する運動の効果についても、本書は詳しく解説しています。
実験によれば、8歳から11歳までのADHDの少年のうち週2回武術の稽古に通っている子どもは、普通の有酸素運動をしている子どもに比べて、行動と成績のいくつもの点で大きな改善が見られたそうです。
落ち着いて勉強ができるようになり、席から離れて動き回ることも少なくなり、成績も上がったそうです。
本書では、脳と体の両方に負荷をかける運動を推奨しています。
具体的には、バレエ、フィギュアスケート、体操、ロッククライミング、武道、マウンテンバイク、スケートボードなどになります。
また誰にでも集中できずに気が散ってしまう、あるいは先延ばしをしてしまうことは経験があることかもしれません。そんなときは、最低限30分の有酸素運動をすれば集中力を取り戻すことができるのだそうです。
運動する習慣を失うと、日常的に体を動かすことは難しくなります。しかし、たんにダイエットのためではなく、集中力を鍛えるためにも運動が有効だと聞くと、モチベーションが少しアップするかもしれませんね。
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参考:『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョン・J・レイティ/NHK出版)