運動が大切なことは、誰もが知っていることでしょう。生活習慣病の予防にもなるし、ダイエットにだって効果があります。でも、けっこう面倒くさいのです。そこでモチベーションの強化方法と、サボリ対策をまとめました。
運動が脳を活性化させる
非常事態宣言の続いている地域では、スポーツクラブは閉まったまま、外のランニングもマスクが推奨されています。パンデミック以降、ちょっと太ってしまったという人は、身体が重く感じるので運動する気をますますなくすということもあるでしょう。それならと5分だけで45分の有酸素運動と同じ効果と宣伝されて「SITトレーニング」にチャレンジしてみたら、もう本当に体がきつかったりします。
だからこそモチベーションや継続の強化方法を、紹介したいのです。
運動が体に良いことは、すでに知られています。しかし運動で頭が良くなることは、意外と知られていないかもしれません。
ハーバード大学医学部准教授のジョンJ・レイティ氏は、『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)という本を出版しています。この本には運動が頭をよくすることを証明する実験結果がたくさん掲載されています。
そのうちのいくつかを紹介しておきましょう。
脳を構成する神経細胞「ニューロン」をシャーレに入れて、BDNF(脳由来神経栄養因子)を作用させると、ニューロンは新しい枝を伸ばして、学習に必要な成長を遂げることが知られています。つまりBDNFはニューロンの存続を助けており、BDNFが多ければ頭が良くなると考えられています。
実験では、長く走ったマウスほどBDNFの量が多いことがわかっています。特に記憶を司る海馬で急増していたのです。
人間でも運動と頭脳との関係が実験で確かめられています。
2007年にドイツの研究者グループが人間を対象として行った研究では、運動前より運動後の方が20%早く単語を覚えられ、学習効果とBDNF値が相関関係にあることが明らかになった。(『脳を鍛えるには運動しかない!』〈NHK出版〉)
健康や長寿のためと言われても、いまいちモチベーションが上がらない人も、頭が良くなるのなら、もう少しやる気が刺激されませんか?
動けばストレスを解消できるわけ
運動がストレス発散になることはよく知られていますが、その効果について疑問に思う人も少なくないでしょう。しかしストレスの根源を考えれば、運動でストレスが軽減するのは当然だ、とジョンJ・レイティ氏は書いています。
生命の危機といったストレスがかかると、生物は戦うか逃げるかの準備である「闘争・逃走反応」が起こります。鼓動は速まり、呼吸も荒くなり、筋肉にエネルギーが送られ、危機に対応できるようになるのです。こうした生命維持の根幹にかかわるストレス反応が、ストレスと運動の関係性を明らかにしているというのです。
闘争・逃走反応の目的が、人間を行動に駆り立てることである以上、身体を動かすのはストレスの悪影響を防ぐ自然な手段なのだ。(『脳を鍛えるには運動しかない!』〈NHK出版〉)
たしかに身体を動かすための準備がストレスの根幹にあるのなら、動くことでストレスが軽減されるのも納得です。
また運動がストレス発散になっているという当事者のコメントも紹介されています。
「運動が習慣になってからは、ワインを飲んだりなにか食べたりしなくても、幸せな気分、爽快な気分を感じられるようになりました。運動は欲しいもの、渇望しているものの代わりになるんです」(『脳を鍛えるには運動しかない!』〈NHK出版〉)
運動を習慣にしたときの精神の安定は、思っていた以上に効果があるかもしれません。運動したくなくて、食でストレス発散していると思う人は上記のコメントを思い出してみください。
忙しい人にこそ試してほしい4つの対策
頭脳にも効き、ストレス発散にも効果を発揮するとわかっても、なかなか一歩が踏み出せない、あるいは忙しくて時間がないという人もいるでしょう。そんな方のためにベストセラー『ピック・スリー』(ランディ・ザッカーバーグ 著/東洋経済新報社)から4つの対策を紹介しましょう。
①5分だけがんばる
けっこう身体はきついのですが、バーピージャンプ(腕立て伏せのように床に胸をつけた姿勢から両足を揃えて立ち上がり、軽くジャンプして頭上で両手を叩く)を使ったSITトレーニングなどは、本当に5分で終わります。YouTubeなどにも紹介動画があるので、ぜひ試してみてください。
②朝の日課にする
ヨガのポーズをいくつかするだけなら、そんなに時間もかかりません。気軽な気持ちで始めてみてはいかがでしょうか?
③お金でやる気を引きだす
地域によっては、まだ使えない方法ですが、スポーツジムに入会すると行かないのがもったいなくて、とりあえず通うといった習慣を身につけやすくなります。
④明日の予定の組み込む
先に予定に入れて時間を作っておけば、多少モチベーションが下がっても実行できるかもしれません。
一気に大量の運動を始めなくても、継続できれば身体も変わってくるでしょう。夏に向けて始めてみるのもいいかもしれませんね。
参考:『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョンJ・レイティ 著/NHK出版)『ピック・スリー』(ランディ・ザッカーバーグ 著/東洋経済新報社)