人はじわじわ来る危機に対応できない! 正常性バイアスの心理

震災やそれに伴う津波、豪雨による浸水、土砂災害など災害が頻発しています。各地で犠牲者が出てしまうことは、とても痛ましいことです。災害が起こったとき、何としても早めに避難して被害を最小限に食い止めたいです。その早めの避難の難しさを垣間見ることのできる、正常性バイアスの心理をご紹介します。

  1. 豪雨で浸水被害、そのときなぜ人は避難しないのか
  2. 正常性バイアスの心理とは
  3. 「他人事ではない」を頭に叩き込もう

豪雨で浸水被害、そのときなぜ人は避難しないのか

災害に遭ったことのない人からすると、「浸水被害で犠牲者が出た」と聞けば、「どうしてもっと早く避難しなかったのか?」と疑問を持つかもしれません。雨による浸水といえば「じわじわ来る」イメージがあるため、避難できる時間は確保できるだろうと思ってしまうのかもしれません。

しかし、実際に被害にあった人は、「あのときは、とうてい避難できなかった」という人が殆どなのではないでしょうか。庭にちょっと雨が溜まってるな、と思い始めてから、家に水が浸入してきて浸水するまで、そう時間はかかっていないというのです。

それにしても避難指示などは出ていたはずだから……と考えそうになりますが、人間には人間の心理的なバイアスが働きます。ものを考える力があることによって、かえって逃げ遅れてしまうと、心理学では考えます。

正常性バイアスの心理とは

東京女子大学の広瀬弘忠教授は、テレビ局の依頼により、次のような実験を行いました。若者たちのいる実験室に煙を流し込み、反応を観察します。2分間にわたり急速に煙を流し込むと、若者たちの半数以上が外へ逃げ出しました。しかし、次に同じ量の煙を4分かけて流し込んだところ、若者たちは実験終了を告げるまで、部屋にとどまっていました。

広瀬氏はこの結果を「人はじわじわと進行する危険に対しては反応が鈍くなる」と結論付け、この結果には「正常性バイアスが働いている」としました。正常性バイアスとは、リスクを「危険ではない」と捉えてしまう心理のことです。そして正常性バイアスには、人間特有の心理傾向が働いています。同調性バイアスと、同化性バイアスです。

同調性バイアスとは、周りが行動しないと自分も行動しない心理傾向のことです。ちょっと慌てても、誰も避難しようと言い出さないと「たいしたことないのかな?」で済んでしまう心理です。同化性バイアスとは、周りの状況に危険や異常がまぎれてしまって気づかない心理傾向を指します。

正常性バイアスには同調性バイアス、同化バイアスが働き、自分が感じている異常や危険を見ないふりして心を平静に保とうとします。日常生活を平穏無事に過ごすには欠かせない能力ですが、こと災害に遭遇すると「まさか、ここまでの事態になるとは思わなかった」という状況に陥ってしまうのです。

「他人事ではない」を頭に叩き込もう

私たちには、数々の災害から得た教訓があり、それらが正常性バイアスに打ち勝つための知恵になります。自分に迫る危険を過小評価してしまう心の傾向を取り払って、「他人事ではない」を頭に叩き込みましょう。他の人よりも早めに避難へ動き出すのは、少し勇気のいることです。しかし、何事もなければそれで何よりなのですから、自分の内側から聞こえる非常ベルに聞き耳を立て、迅速な行動を心がけましょう。

参考:『きちんと逃げる。』広瀬弘忠、アスペクト

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