現代はストレス社会であると言われ始めてから、けっこうな年月が経ちました。今や、仕事でストレスを感じるのは当たり前と捉えられ、ストレス対策の方法にも注目が集まっています。
でも、どうしてもストレスを感じてしまうのなら、負荷を成功の布石に変えるために、むしろストレスと向き合うことでストレス耐性を高めてみてはいかがでしょう。
- ストレスに強くなるために重要なのは「対処」の成功体験
- 災害後しばらくしてから起こる子どものごっこ遊び
- ストレスの原因から逃げずに、その経験について考える
- ヨガや瞑想が効果的
- 大事なのは「感情への反応」
ストレスに強くなるために重要なのは「対処」の成功体験
ストレスに強い人と、弱い人がいることは、日常的に人と接していて感じるでしょう。心身ともに健やかに生きていくためにも、ストレスに強い人になりたいと思いませんか。法政大学の坂爪博美教授は、ストレスに強くなるためにはストレス対処の成功体験が大事としています。ストレスにうまく対応できたという経験が、自信につながるというのです。
これが可能なら、「ストレスに打ち勝った」「ストレスにうまく対応できた」という実感を持つだけではなく、そのストレスを自分の力にすることができるでしょう。
災害後しばらくしてから起こる子どものごっこ遊び
ストレスへの対処法としては、東日本大震災後に被災地の子どもが興味深い行動をしています。震災後しばらく経った頃、子どもたちが「震災ごっこ」をする例がみられたというのです。「地震だー!」と騒いだあと、ワーッと逃げたり、机の下に隠れたり、その机を激しく揺らしたり……。
地震の体験から立ち直れない大人にとっては、「そんな遊びしないで」と思うかもしれません。しかし、これは子どもなりのストレスへの向き合い方だとする考え方があります。やっと安全が確保された環境で、自分のなかの恐怖心を吐き出し、表現することで心のバランスを保っているというのです。
すると、繰り返し自分が体験した恐怖や不安を疑似体験することでストレスを回避していると、この場合は言えることになります。また、トラウマになった体験を再現することで子どもたちがそれを対象化し、遊びとして客観的に捉えコントロールすることによって、恐怖体験を組み替えているのだという指摘もあります。
ストレスの原因から逃げずに、その経験について考える
全て子どもに倣うことが正しいとは限りませんが、私たちにも「地震ごっこ」には学ぶべき点があるのかもしれません。ストレスの原因から目を背けたり、完全に思考を停止させてしまったりすることなく、その経験について考え、振り返りを行うことにメリットがありそうです。
スタンフォード大学のケリー・マクゴニガル教授は、その著書の中で「ストレスは武器に変えられる」と述べています。そのために行うのは、やはりストレスの追体験です。自分の身に起こった辛いこと、感じたことを率直に書き連ねることで「前向きなエネルギー」が出てくるとしています。
ヨガや瞑想が効果的
ケリー氏によると、ストレス耐性を高めるには、ヨガや瞑想も効果的だとのこと。ヨガや瞑想は、集中力を高め、自分自身と純粋に向き合うことのできる行為です。ストレスから逃げず、じっくり向き合う訓練になると述べています。先ほど出てきた「ストレスを感じた内容を何度も紙に書く」という行為が「地震ごっこ」の文章版なら、ヨガや瞑想はその想像版だといえます。
大事なのは「感情への反応」
また、スポーツ心理学の権威であるジム・レーヤーは、著書『メンタル・タフネス ストレスで強くなる』のなかで、大事なのは出来事やそれに対する自分の感情ではなく、自分の感情への反応なのだと述べています。自分の感情を客観的に捉え、過剰にネガティブな反応をすることがなければ、ストレスによるダメージは少なくなると説明しています。
自分なりのやり方でストレスを追体験し、打ち勝つイメージを得ることができれば、身体の内側から自信が湧いてくることでしょう。ストレスをプラスに変えることができれば、ストレスを必要以上に怖がらなくてもいいと思えるでしょう。
参考:『スタンフォードの心理学講義 人生がうまくいくシンプルなルール』ケリー・マクゴニガル、日経BP社