独り言を言う人を、どう感じますか?多くの人がマイナスのイメージを持っていることでしょう。しかし近年、独り言を口にする効果が確かめられています。今日から活用したい独り言の心理的な効果についてまとめてみましょう。
独り言でパフォーマンスがアップする!
独り言をつぶやいている人を見ると、ちょっと不安な気持ちになることもあるかもしれません。実際、独り言を人前で口にしないように気を付けている人も多いでしょう。
ただ、ほとんどの人が独り言をいっさい言わないのかというと、そういうわけでもなさそうです。人がいない部屋やトイレ、一人で運転しているときの車中など、他人の目が気にならないところで独り言をつぶやいている人も多いそうです。
実際、独り言をつぶやくことで、パフォーマンスが上がることが立証されています。心理実験の成果を順番に紹介していきましょう。
①短時間の集中力アップに
英国のウルバーハンプトン大学のアンディー・レーン氏の実験では、数を見つけるオンラインゲームを4つのグループに分けて実施しました。独り言をつぶやくグループ、より速く反応する自分をイメージするグループ、起きるかもしれない状況を予測して反応を考えながらゲームするグループ、特に何もしないグループです。
スポーツの世界ではイメージトレーニングが当たり前になっているので、この実験でも高得点を取ると思うかもしれませんが、最も効果があったのは独り言でした。しかも「90点をとるぞ」といった具体的な目標をつぶやくのではなく、「一番になりたい」「できるかぎりがんばるぞ」といった独り言が最も有効だったのです。
この実験結果から、短時間の集中力を高めるのに、自分への声掛けは有効なことがわかりました。例えば、「あと少しは我慢できる」といった独り言によって、自身のパフォーマンスを良くすることができるようなのです。
②二人称で行動や気持ちを変える
ミシガン大学の研究チームは、実験参加者にメモの使用を禁じて5分の準備時間で独り言をつぶやかせてからスピーチさせました。すると「私はなぜ緊張しているのか」と一人称でつぶやくより、「あなたはなぜ緊張しているのか」と二人称でつぶやいた方が落ち着いて説得力のあるプレゼンをすることができたというのです。
二人称で独り言をつぶやくと、自分を客観的に見て、有益なフィードバックを得ることができるそうです。特に以下のようなルールに従って独り言をつぶやくと、より効果があるそうです。
(1)二人称でほめる
「あなたはよくやった」と自分の行動をほめて評価することで、モチベーションをよりアップすることが可能になります。独り言で自分をほめることで、企業の離職率が22%から8%に縮小したという事例もあります。ぜひ、試してみたい行動です。
(2)批判ではなく改善を促す
「失敗した」ではなく「今回は最善を尽くさないから失敗した。もっと頑張らないと」といった形でつぶやくことで、前向きな気持ちで臨むことができるようになります。
(3)無意識につぶやけるように訓練する
一つの独り言が無意識に出てくるように訓練しましょう。じつは気づかないうちにネガティブな独り言をつぶやいていることは多いもの。そうしたマイナスの効果を発揮する独り言をやめ、プラス効果のある独り言を無意識につぶやけるようにしましょう。
(4)短く明確な独り言をつくる
長い独り言は無意識でつぶやくのに向いていません。短くて、あいまいではない独り言をつくりましょう。
③記憶を刺激する
ペンシルバニア大学のダニエル・スウィングリー教授の実験は、独り言を言いながら探し物をしたとき、見つけるまでにどれぐらい時間がかかるのかといったものです。結果、独り言を言いながら探した方が、探し物の時間が短いことがわかりました。
これは独り言が記憶を刺激するからだと言われています。独り言を言うことで、その単語と関連のある記憶が引き出されてくるのだそうです。探したいものを独り言で唱えると、それに関連する記憶が引き出されるので、正解にたどり着く時間も短くなるというわけです。
度忘れした人名を、エピソードなどをつぶやくことで、思い出した経験はありませんか? 関連の記憶が刺激されると、思い出せない記憶も浮かび上がってくるのです。
また、独り言は自分の思考を整理する効果もあると言われています。周辺情報を刺激し、思考を整理する効果があるのですから、独り言を言いながらの勉強や仕事は、より能力を発揮できる可能性が高まります。
周りに迷惑にならない程度の独り言をつぶやいて、仕事をするのも一つの方法かもしれませんね。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「’Self Talk’: When Talking to Yourself, the Way You Do It Makes a Difference」(Elizabeth Bernstein/THE WALL STREET JOURNAL)