「質問力」という言葉をよく聞くようになりました。「質問なんて聞きたいことをたずねるだけでは?」と思っているのなら大間違い。質問力を磨けば、いろんな人が自発的に動いてくれるようになりますよ。いま話題の質問力についてまとめました。
- 多くの人が活用している質問力
- 相手の自尊心を守って質問する
- 言い訳と別の理由で質問
- 怒りもコントロールできる
多くの人が活用している質問力
新入社員やパートナー、子どもの行動を変えてほしいときに、質問が役立つと聞いて驚く人も多いかもしれません。知りたいことを教えてもらうのが質問だと一般的には思われているからです。
コミュニケーション・コンサルタントのドロシー・リーズは、自著で質問には7つの力があると書いています。思考力を鍛えたり、状況をコントロールしたり、人の心を開いたりといったことも、質問が持つ力だというのです。
意外に思うかもしれませんが、こうした質問の力を誰もが日々活用しています。
例えば「それって大丈夫ですか?」と質問したとき、暗にやめましょうと主張していることになります。質問された方も、改めて状況を考え直すきっかけになるでしょう。
相手の自尊心を守って質問する
こうした質問力を、意図的に使えるようになると人間関係はよりスムーズになります。
そもそも他人から行動を変えるように言われるのは、気持ちよいものではありません。それまでの自分が否定されたような気分になるため、素直には受け入れられないのです。
例えば「散らかっているから片付けて」と言われると、「自分には何がどこにあるかわかっているから!」といった反論が出てしまうのです。しょっちゅう探し物をしていても、自尊心を守るために自己弁護してしまうのです。
ところが「あなたがいないとき、探せないことがあるから、私がわかるようにしておいてくれないかな?」と質問の形で言うと、反論することなく片づけてくれたりします。
もともと整理ができない自分の行為を恥じていた人は、面倒くさいと思ってはいても、片づけるきっかけを探していることも少なくありません。だからこそ、たった一つの質問で行動を変えることができるのです。
言い訳と別の理由で質問
質問で他人の行動を変える手法について、弁護士の谷原誠さんは自著で次のように書いています。
「(相手の主張する)理由に反対するのではなく、それと全然別の理由を持ってきて行動の変更を依頼します。こうすることで、それまで相手は間違っていなかったことになります」(『「いい質問」が人を動かす』文響社)
さらに動いてくれたときは、その行動を称賛し、今後の継続も期待するように話せば、同じように行動してくれる可能性が高まります。
この質問は、さまざまな場面で応用が可能です。
まず、相手の言い訳を思い浮かべて、次に言い訳と関連しない方法を見つけて、質問するのです。
「忙しいから」とまったく家事を手伝わないパートナーには、「休日にあなたの手料理を食べたいから、たまには作ってくれないかな?」と言ってもみるのもいいでしょう。
何度も同じような言い訳を聞かされている場合は、その理由を的確に避けることができるため、かなり有効です。
怒りもコントロールできる
質問は行動だけではなく、感情もコントロールすることができます。
例えばミスを上司から厳しく非難されている場合の対処法として、『質問7つの力』(ドロシー・リーズ/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、次のような質問をあげています。
「すみません。たしかに私の間違いです。同じ間違いをくり返さないよう、何か提案していただけますか?」
これは感情的な上司に、論理的な解決法を考えてもらうことで冷静さを取り戻してもらいつつ、助けを求めることで自尊心をくすぐる質問だそうです。言うタイミングは難しいかもしれませんが、効果はありそうですね。
怒っている相手に言い訳をすれば、相手の怒りはどんどん増してしまいます。ところが質問で少し矛先を変えるだけで、コミュニケーションは変わってくるのです。
今日は日常生活に使えそうな質問力について、具体的に説明してみました。使えるタイミングがあれば、活用してみてください。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『質問7つの力』(ドロシー・リーズ/ディスカヴァー・トゥエンティワン)/(『「いい質問」が人を動かす』谷原誠/文響社)