「自分なんて……」「どうせ……」「私はダメだ」「すみません」が口癖になっていませんか? 自分に自信がなくて、感情に振り回されることも多くて、自分より他人を優先してしまって……。それ自尊心が低いからかも! 自尊心を高める心理学的な対策をまとめました。
- 自尊心が低いことでパートナーの関係が微妙に
- 自分に価値がないからどうなの?
- 自尊心を高める4つの方法
自尊心が低いことでパートナーの関係が微妙に
「自分なんてどうせ成功しない」「自分なんて愛してもらえない」「私はダメだ」。そんな独り言を口にしていたら要注意です。さらに自分が悪くないもないのに、「すみません」を連発していたら、かなり自尊心が低い状態かもしれません。
「自尊心」とは自分自身を尊重する気持ちです。つまり自尊心が低いと、自分を尊うことができないのです。しかも低い自尊心は、やっかいな問題を招きがちです。
2018年に発表された論文によれば、自尊心の低い人はパートナーなどから適切な気遣いを受けにくいそうです。
例えば恋人である自分との記念日に、パートナーが友人と遊びに出かけようとしています。モヤモヤしているあなたはパートナーに計画の変更を主張したいと思いつつ、「でも、嫌われたら」とか「そんなこと言っていい?」という不安が頭をかすめ、パートナーと話し合いを断念します。一方でパートナーに不機嫌な態度で接したり、元気のない自分を見せつけてしまいます。結果的に、こうした態度がパートナーとの関係を悪化させてしまうのです。
つまりパートナーに不安や不満を伝えて話し合う「痛み」を回避した結果、受けられたはずのパートナーの気遣いもなくなってしまったのです。
さらに自尊心の低い人に狙いを定める悪人もいます。
女性にたかる「ヒモ」を職業としている人が書いた本には、ターゲットにする女性を選ぶ方法が書いてありました。それは食事中にテーブルの下でわざと足をぶつけること。そのとき相手の女性が「ごめんなさい」とか「すみません」と謝罪を口にしたら、ターゲットとして「合格」なのだそうです。悪いこともしていないのに謝る人は低い自尊心の可能性が高く、そうした人は自分より他人を優先するため、ターゲットにしやすいというわけです。
また、自尊心が低いと失敗を極度に恐れたり、「正しさ」に強くこだわったり、周りの目を気にし過ぎたり、感情に振り回されたりといったことも起きるようです。
けっこう生きづらいですよね!
では、どうすれば自尊心が高くなるのかを、見ていきましょう。
自分に価値がないからどうなの?
まず、身も蓋もないことを言えば、「自分の価値」などほとんど意味がありません。つまり「どうせ私なんて」と考える根拠がないのです。「私はダメ」と判断する基準もありません。それでも会社には人事評価があり、それが給与に反映されていると言いたくなるでしょう。
ただ、それさえも本当は意味がないのです。「部長まで上り詰めたのに、転職活動をしたらどの会社からも評価されなかった」「頑張ってお金を稼げるようになったのに、好きな人は振り向いてくれない」といったように、評価する環境や相手が変われば「価値」は激変するからです。
「でも……」と思う人は、小学校時代にモテていた男子を思い出してみましょう。「足の速い人」は人気者だったでしょう。しかし大人になってみると「足の速い」人は魅力的に映りますか? 足の速いだけの人と結婚したいと思ったり、仕事を投げ出しても足が速くなりたいと思う人は少ないのではないでしょうか?
著名な精神科医デビッド・D.バーンズは、「あなたは無能だ」と言われたときには、次のように反論すべきだと書いています。
「そうだとしても、どうしてあなたの方が価値があるって言えるんですか?」(『いやな気分よ、さようなら 自分で学ぶ「抑うつ」克服法』星和書店)
じつはこの返答への対応は、なかなか難しいのです。「地位がある」「お金がある」「恋人がいる」といった自分に価値がある理由を並べても、「確かにそうだけど、だったらどうしてあなたの方が価値があることになるの?」と、再度たずねると途端に返答に困ってしまうからです。ついでに「自分は満足している」と言い放てば、価値でマウントを取ることはできないと相手もわかってくるでしょう。
世の中の価値はほぼ相対的なもので、状況が変われば評価も変わってしまいます。だからこそデビッド・D.バーンズは、
「『価値』を求めるよりも、日常生活での満足、喜び、新しい知識、熟達あるいは自分の成長や他人との交際を求めることです。自分自身で現実的なゴールを設定して、それを達成するよう努めることです」
と語っています。
多くの人は「その通りだ」と思うことでしょう。少なくとも他人と比べての価値に意味がない以上、気にする必要はないのです。ただ問題は、意味がないとわかっても簡単に手放せないことでしょう。
そこで自尊心を高める具体的な方法を、次に紹介していきましょう。
自尊心を高める4つの方法
自尊心については、心理学でさまざまな研究がされており、その対策も多様です。そこで心理学の研究者や臨床医が推薦する方法を取り上げます。
①「ありのままの自分を愛する」と誓う
最初の対策法は、自分を愛すると誓いを立てること。人によってはバカらしく感じるかもしれませんが、自分を尊重できないところから始まる自尊心の問題は、ありのままの自分を愛することで解決に向かっていくのです。
自尊がかなり低くなっても、ありのままの自分を愛する気持ちが完全になくなるわけではありません。「ダメだ」「自分なんて」といつも自分を攻撃していても、心の奥で「けっこう頑張っているよ」「頑張れ」と声をあげている別の自分がいるからです。そうした声に耳を傾けられるようになるためにも、まず、ありのままの自分を愛すると誓いましょう。
②自分で決める
自分に自信がないと、いろんなことを自分で決めなくなります。人に意見を聞いて従ったり、空気を読んで判断したり。そうすれば失敗しても、他人のせいにできます。ただ成功しても自分の自信につながりません。
精神科医でありベストセラー作家でもあるユン・ホンギュンは、自著『どうかご自愛ください』(ダイヤモンド社)で
「自尊感情とは、感情的に見ると自分を愛する心であり、理性的には自ら決定し、自分の決定を尊重する能力なのです」
と書いています。
自分を愛する心と、自分で決定能力を取り戻すことで自尊感情は高まっていくというのです。
自分で決定すれば、失敗することもあるでしょう。「別の選択にしておけばよかった」と後悔することもあるはずです。そんなときは「次に同じようなシチュエーションならこうしよう」と、過去の後悔から未来への指針に意識を変えましょう。そもそも失敗の多くは、人生を激変させるほど大きな問題になりません。むしろ「失敗しないように」と挑戦を避けたり、過度に調整し過ぎることで、人生は変わってしまいます。
失敗したことで、どんなことが起きるのかを観察してみるのもいいでしょう。思ったより大事にならないとわかることは、自尊心が低く、過度に失敗を避けようとしてきた人にとって大きな気づきとなるでしょう。
③自尊心の高い人のマネをする
自尊心の高い人の行動をマネてみましょう。身近な人をモデルにしてもいいし、小説や映画などの主人公を頭に思い浮かべてもいいでしょう。自尊心の高い人らしい行動をマネていると、気持ちも変わっていきます。
また、背筋を伸ばし、ゆとりのある人のように胸を張って歩くようにしましょう。姿勢は決断や考え方を変えることが知られています。自尊心の高い人をイメージして歩けば、自尊心も育っていくでしょう。
自分のことを愛している表情を鏡でつくってみましょう。表情をつくることに脳が反応するので、自分を愛する気持ちも生まれやすくなります。自分への愛を表情から育んでみてください。
独り言が精神状態に強い影響を与えていることは、近年の研究でも明らかになっています。ネガティブな独り言を、ポジティブな言葉に変えていきましょう。「本当に私はダメ」ではなく、「現実が厳しい中、よく頑張ってる」と自分に言うようにしましょう。
④自分の行動を誉める
自分を卑下するような言葉を書き出し、自分を尊重する内容に書き換えましょう。
「私のやっていることは、つまらない仕事ばかりだ」
→「つまらない仕事を、誠実にこなしている自分はすごいな」
「会社と自宅の往復だけの人生なんて何の意味もない」
→「目立たないかもしれないけれど、しっかりと働き、規則正しい生活ができることは、明日につながる一歩になっている。それは素晴らしいことだし、自分の存在があるから会社全体の仕事も回っている」
自分の行動をよくよく考えると、評価できるポイントは意外にあるものです。そうした項目をしっかりと見直し、日々の行動を自分の自信につなげていきましょう!
今日は自尊心が低い人の対策法をまとめました。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『どうかご自愛ください』(ユン・ホンギュン/ダイヤモンド社)/『いやな気分よ、さようなら 自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(デビッド・D.バーンズ/星和書店)/「Why Your Low Self-Esteem May Cause You to Be Treated Poorly」(Amy Morin/Psychology Today)