「コロナはただの風邪」。クラスターデモに参加する人の心理とは

マスクをしないで渋谷で人が集まった「クラスターデモ」がメディアで報じられ、多くの批判が集まりました。では、「コロナはただの風邪」といった主張の裏には、どんな心理があるのでしょうか?

  • 割を食っているという怒り
  • 恐怖を使った効果は長続きしない!?
  • 新型コロナの恐怖感にも差が出てくる

割を食っているという怒り

新型コロナウイルス対策への抗議活動という「クラスターデモ」が、大きな関心を呼んだのは、8月9日の「デモ」の様子がメディアに報じられたからでした。マスクをしないで山手線に乗車した動画は、11万回以上も再生されたそうです。

じつは米国や欧州などでも、ロックダウン(都市封鎖)やマスク着用義務化に反発する声が上がり、一部ではデモなども行われています。経済との兼ね合いもあり、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う自粛生活への反発が一部では強まっているのでしょう。

精神科医の片田珠美さんは、毎日新聞の取材に答え、クラスターデモに参加する人の心理を次のように分析しています。

「高齢者らに感染させないように自粛を求められるが、それに対して自分たちが割を食っているという怒りや反感がある」(『毎日新聞』8月10日)

さらに片田さんは「クラスターデモ」の参加者が20~30代の比較的若い年齢であり、新型コロナウイルスに感染しても重症化する割合が低いことが、こうした心理の背景にあるとも指摘しています。

恐怖を使った効果は長続きしない!?

恐怖によって、人がどのように行動するのかといった研究は、1950年代以降、社会心理学者によって研究されてきました。その中には健康のための行動を、恐怖によって動機づけるといったものもあります。例えば、タバコの害(恐怖)を強調したとき、人は禁煙に向けて動き出すのかといった問題です。

こうした研究により、恐怖のレベルが高すぎると、人は自らの行動で恐怖を減らせないと感じて情報をシャットダウンするようになることがわかってきました。逆に恐怖が小さすぎれば、将来の不安などを無視して行動するようになります。つまり恐怖で行動を変えていくためには「適度な」恐怖のレベルが必要というわけです。

危機感や不安感に訴えて商品購入などの行動を促す「恐怖訴求」の研究では、効果を発揮するためには、次の3つの基準を満たしている必要があると、PratkanisとAronsonは指摘しています。

①広告が怖いこと

②恐怖を克服する方法が示されること

③簡単に克服できること

上記の条件以外にも、恐怖を克服するための行動の種類は、繰り返すものより、1回で終わるものタイプの効果が高いこともわかっています。つまり面倒だと恐怖を感じても行動しない人が多くなるというわけです。

さらに恐怖を使った広告は、長期的な効果は疑わしいという研究結果もあるようです。不快な広告や画像から多くの人が目をそらすようになるからです。

南カリフォルニア大学ケック医学部のShoba Sreenivasan,PH.Dは、

恐怖は説得力のあるコミュニケーションの一種です

と指摘していますが、恐怖で行動を変え続けるのは容易ではないようです。

新型コロナの恐怖感にも差が出てくる

実際の感染の恐怖を、広告の「恐怖訴求」の効果とまったく同じように比べることはできません。

しかし上記の条件で考えると、新型コロナウイルスに対する恐怖だけでは、行動を変え続けるのが難しいとも感じます。

新型コロナウイルスは簡単に克服できるものではなく、日々、行動に気を付ける必要があります。しかも年代などによって「恐怖」の度合いが変わります。行動を変えるほどの恐怖と感じない人もいれば、外に出るのさえ怖いと感じる人もいるでしょう。こうしたギャップにより行動も変わってきます。これに加えて、経済的な問題への恐怖も人によって異なるのです。

今後、新型コロナウイルスのとらえ方は、人によって変わってくるでしょう。そうした中で自分と周りの人の健康を守り、経済にも力をいれる必要があることを改めて考える必要があるのかもしれません。

人の心理に興味のある方はこちらをご覧ください。

参考:「Fear Appeals」(Shoba Sreenivasan, Ph.D., and Linda E. Weinberger, Ph.D./Psychology Today)/「COVID-19: What Is the “Right” Amount of Scared?」 (Shawn M. Burn Ph.D./Psychology Today)/「『反自粛』クラスターフェス 自粛警察とは正反対のアピール 参加する心理とは」(『毎日新聞』2020年8月16日)

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