断られてもヘコまない ピンチをチャンスに変える交渉術

通常、交渉事は相手に否定されないように話を進めるものです。むしろ断りにくいように先回りして、やや無理にでも承諾するような交渉をする人もいるかもしれません。しかし交渉は「ノー」からスタートするといった説もあるようです。

  • 「ノー」が交渉の始まり!?
  • 「拒絶」にめげずに進む
  • 説得のポイントは「要約」

「ノー」が交渉の始まり!?

『逆転交渉術 まずは「ノー」から引き出せ』(早川書房)は、元FBIの人質交渉人であるクリス・ヴォスらが書いた書籍です。そもそも交渉開始時点で圧倒的に不利な人質交渉において、交渉が「ノー」から始まるのは当たり前のことかもしれません。

しかし多くの人は「ノー」を突きつけられることを避けたいと思うもの。取り付く島もないような断られ方をすると、なかなか要求を口にすることも難しくなるでしょう。

「契約を取るように言われていたけれど断られた」「大事なお願いだったのに、話も聞かずに断られた」などなど。そんなピンチにも、この本や役立ちそうです。

「ノー」は交渉の起点であって、終点ではない

「ノー」は現状を維持するための、とりわけ一時的な決定であることが多い。

この本によれば、交渉ごとの「ノー」は完全な拒絶と言えないケースもあるようです。

たしかに交渉ごとに相手が「ノー」を言う時、さまざまな要因を検討して答えを出していないケースもありそうです。営業が面倒だなと思っている場合に「無理ですね」と答えてしまうケースなどは、けっこうありそうです。

「拒絶」にめげずに進む

実際、著者であるクリス・ヴォスが人質交渉人の職を得るための交渉は、FBIの人質交渉チームの指揮官に直接自分を売り込んだものの、けんもほろろに断られ、出ていくよう命令されたところから始まっています。そのとき自殺防止ホットラインでボランティアでもするように言われたことを突破口に、実際にボランティアを経験して事務所に再訪。交渉人の地位を勝ち取ったそうです。

確かに冷たく断った志願者が、言われた通りに実行して戻ってきたら話を聴いてもいいかも思うかもしれませんね。

「ノー」と言うことで、言った人間は安全と備え主体性が確保されたと感じる。つまり「ノー」と言い放つと会話の主導権を確保することになるので、当人も安心します。だからこそ「ノー」と言われた側も、相手の懐に飛び込める可能性が高まるのです。「ノー」という答えを引き出す質問を使えば、相手はあなたをはねつけたことで、主導権を握っているのは自分だと証明できた気になる。

上記のように「ノー」を解釈できれば、確かに本当の交渉は「ノー」の後から始まると考えられるでしょう。

多くの人は拒絶に傷つきます。

営業の厳しさはノルマ達成に対するプレッシャーだけではありません。人から拒絶されることが少なくないことも大きな要因です。営業が、感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが必要になる「感情労働」に分類されることがあるのは、こうした側面があるからでしょう。

しかし、この拒絶を乗り越えたところに交渉の糸口があるなら試してみる価値はあるかもしれません。ちなみにフレデリック・ニューマン医学士は、成功の見込みを考えると、拒絶への耐性がつくと書いています。

説得のポイントは「要約」

では、実際に「ノー」と言われた人は、どうやって相手を説得することができるのでしょうか?
『逆転交渉術 まずは「ノー」から引き出せ』は、ポイントは要約だと指摘しています。要約を相手が聴いて、「そのとおりだ」と思ってくれれば交渉は成功するのだそうです。

「ノー」と言われた後に会う時とは、相手の興味のあることや情熱を傾けていることに話を振って、そこから要望や欲求を聴きだし、それを要約すればいいそうです。例えば「〇〇に情熱を傾けていらっしゃるから、〇〇のような製品が欲しいんですね」といった形で要約し、相手から「そのとおりだ!」と言われれば、商品の売り込みも難しくないそうです。

問題は相手の情熱や要望と一致するような話の展開をつくれるかでしょう。

ただし最初の「ノー」が、交渉の余地もないほどの拒絶である可能性も忘れないようにしましょう。

心理学を活用したコミュニケーションについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

参考:『逆転交渉術 まずは「ノー」から引き出せ』(クリス・ヴォス タール・ラズ/早川書房)/『すぐ試したくなる! 実践 心理学大全』(おもしろ心理学会/青春出版社)

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