その距離近くない!? パーソナルスペースに要注意!

新型コロナウイルス感染症対策のため2メートルのソーシャルディスタンスが推奨されています。でも心の距離はどのくらいなのでしょうか?そこで心理的な距離についてまとめてみました。

  • パーソナルスペースも国で変わる
  • 8つに分かれる対人距離
  • ロボットと話すときは恋人との距離

パーソナルスペースも国で変わる

他人に侵入されると抵抗感が湧き上がる心理的な空間を「パーソナルスペース」と呼びます。関係性によってパーソナルスペースは決まっており、その境界線を越えて侵入されるとイヤな気持ちになるのです。

このパーソナルスペースは、いわば「縄張り」。デスクの周囲に仕事と関係ない私物を置いたりする人は、無意識に縄張りであるパーソナルスペースを主張しているケースがあるとのこと。

「会社の上司の距離が近すぎる!」といった感情は、自分のパーソナルスペースに入り込まれたときに起こります。一般的に攻撃的な性格の人ほど、パーソナルスペースも広いと言われています。

じつはパーソナルスペースは、関係性や性格だけではなく、国によっても変わってきます。そして冒頭で触れたソーシャルディスタンスも、国によって変わってくるのです。

日本と同じ2メートルを採用しているのは、スイス、スペイン、韓国などです。米国は1.8メートル。ドイツとホンジュラスは1.5メートル。フランスとイタリアは1メートルとなっています。同じ南欧でも、スペインとイタリアでは1メートルもの違いがあるのです(出典「ロコタビ調べ」)。

8つに分かれる対人距離

では、距離と人間関係は、一般的にはどのようになっているのでしょうか? まとめてみましょう。

まず、対人の距離は、近い順に「密接距離」「個人距離」「社会距離」「公衆距離」があります。

「密接距離」は、0cm~45cmです。
相手の身体に触れられる距離でもあり、ごく近しい関係だけに許さる距離となっています。この距離に他人が入ってくると、かなり不快感を覚えます。

「個人距離」は、45cm~120cmです。
相手の表情が読み取れる近さであり、親しい友人・恋人・家族などと普通に会話するときは、この距離です。

「社会距離」は、120cm~350cmです。
ポイントは、相手の手が届かない距離であること。知らない相手や公的な場面での距離となります。ソーシャルディスタンスは、この距離で行われています。

「公衆距離」は、350cm以上です。
路上や交通機関のホームなど、公共の場での距離で、セミナー講師やライブなどはこの距離が適切とされています。

さらに、これらの4つの距離は、それぞれ接近相と遠方相に分かれます。どのような距離かを紹介しましょう。

「密接距離 接近相」 0㎝~15㎝
かなり親しい距離で、保護や格闘、慰めといった体を触れ合うコミュニケーションの距離となります。

「密接距離 遠方相」 15㎝~45㎝
手の届く距離であり、不快感がないのはかなり親しい間柄のみです。この距離に他人が入られるとストレスが高まります。電車やエレベーター、車などでも、本来的には他人に45㎝以上離れてほしいのです。

「個人距離 接近相」 45㎝~75㎝
恋人や夫婦にとっては当たり前の距離ですが、それ以外の異性が、この距離に入ってくると、かなり警戒心が働きます。

「個人距離 遠方相」 75㎝~120cm
個人的な要件を伝えたいときなどは、この距離で行います。

「社会距離 接近相」 120㎝~210㎝
知らない人同士の会話や仕事をするときの仲間との会話にピッタリの距離となります。

「社会距離 遠方相」 210㎝~360㎝
仕事などでも改まった話で使われている距離です。またこれぐらい距離が離れていると、何かしたいときに、相手を気にすることなく作業ができます。

「公衆距離 接近相」 360㎝~750㎝
これぐらい離れると、表情の変化は捉えにくくなります。ただし質疑応答など簡単なコミュニケーションには問題のない距離です。

「公衆距離 遠方相」 750㎝~
講演などにふさわしい距離で、一対一のコミュニケーションがやや難しくなります。この距離では身振りなど必要になってきます。

ソーシャルディスタンスの200cmは、「社会距離 接近相」に属するため、個人的な要件を伝えようとしたときには、やや遠く感じるかもしれません。またソーシャルディスタンスが少し広がると、210㎝~360㎝の「社会距離 遠方相」になってしまうため、同僚などと話しているときは、少し遠いかなと思うかもしれません。

ロボットと話すときは恋人との距離

じつは適切な対人距離はロボットにもあります。
展示場でロボットに話しかける距離を観察すると、125㎝以下でしか起こらず。ロボットを触るのは、75㎝以下だったという研究があります。またロボットとの対話でベストだと感じる距離は、初対面でも40%もの実験参加者が45㎝以下を選択しました。

どうやらロボットとの距離は、人と比べるとかなり近いようです。45㎝以下は、「密接距離 遠方相」なので、かなりの人が恋人と同じような距離感で話したいと思うというわけです。

今日は距離と人間関係についてまとめました。対人関係の距離は心の距離を表します。間違えると理屈抜きで不快な思いをさせてしまうので、注意が必要でしょう。

参考:『他人の心理学』(渋谷昌三/西東社)/「コミュニケーションロボットと人間の距離」(神田崇行)/「国よって違う?! 世界の各国のソーシャルディスタンスと町の変化」(ロコタビ)

◆日常に役立つ心理学に興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:日本産業カウンセラー協会

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