「コロナ離婚」という言葉を耳にすることが多くなりました。自宅で顔を合わせる時間が多いだけに、いさかいも多くなり離婚に……。では、こうした離婚のバックグラウンドには、どんな心理があるのでしょうか?その秘密を探ってみました。
- 東日本大震災の時の離婚率は?
- 熟年夫婦ほど相手のことを知らない
- 相手のことを知らないという前提
東日本大震災の時の離婚率は?
ツイッターでコロナ離婚のつぶやきを読んでいくと、「コロナ離婚」を決意する人にはいくつかのパターンがあることに気づきました。
①距離を置いていることで見ないようにしていた不満が共有時間が増えることで表面化した
②共有時間が増えることでパートナーの新たな欠点を知った
③人生には限りがあるという実感から、残りの人生をパートナーと一緒に過ごしたくとないと考えた
危機だからこそ人生を見つめ直すきっかけにもなるということでしょう。ただ、東日本大震災の時は、厚生労働省の人口動態統計を見る限り離婚率が減少しています。
こうした動向について日本経済新聞の長田正編集委員は、次のように分析しています。(2013年1月22日)
「単に家族の絆を求める感情を意識しただけではなさそうだ。被災の現実を目の当たりにして、危機に対処するための家族という『機能』に目を向けた、実利的な側面がみえる」
つまり経済的な側面も考慮して、離婚を回避しようと考えた人が多かったのではないかという推測です。
今後「コロナ離婚」が増加していくとすれば、経済的な問題を吹き飛ばすほど我慢ならなくなったということでしょう。①のように、もともと距離を置いていた夫婦が離婚するのは、その典型です。直接的な離婚原因は自宅で共有時間が増えたことかもしれませんが、その背景には③のように人生の残り時間を考えての決断もあるかもしれません。
熟年夫婦ほど相手のことを知らない
では、②のようにパートナーの新たな一面を知ったのはどうしてでしょうか?
もちろんテレワークなどで仕事をしている姿を、目にしたというパターンもあるでしょう。しかし、夫婦の人間関係には、もっと根本的な問題があるかもしれないという心理実験があります。
スイスのバーゼル大学のベンジャミン・シーンベン氏は、夫婦にパートナーの好き嫌いを予想させました。
1つグループは、連れ添って年月の平均が2年1ヵ月の夫婦38組。もう1つのグループは、連れ添った年月の平均が40年11ヵ月の夫婦20組。結果、若い夫婦の正解率は42.2%。一方、熟年夫婦の正解率は36.5%だったのです。
つまり熟年夫婦の方が、相手の好みを知らなかったというわけです。
さらに問題なのは、正解への確信度でした。熟年夫婦ほど自分の予想に自信を持っていたのです。
相手のことを知らないという前提
考えてみれば、食事でも、衣服でも、若い頃の好みが変化していることは珍しいことではありません。いくら長年連れ添っていても相手への関心が薄れれば、好みを把握できなくなるも当然かもしれません。
ただ、そうした事実を長年連れ添った夫婦ほど無視しがちなのです。
「コロナ離婚」を回避するためには、自分は相手のことを知らないのだという前提に立って、パートナーを理解しようと努めることが重要になってくるでしょう。相手の求めているものや避けたいと思っていることなどは、こうした非常時だからこそ尋ねられるという側面もあるかもしれません。
「コロナ離婚」の危機が進行している可能性もあるので、非常事態宣言が解除された今こそ関係改善のために少しだけ努力してみるのもいいかもしれません。
参考:「震災後の離婚率低下とファミリー消費の因果関係」(長田正/『日本経済新聞』 2013年1月22日)/『世界最先端の研究が教える もっとすごい心理学』(内藤誼人/総合法令出版)
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