生産性向上が叫ばれる昨今、焦りながら仕事をしている人はいませんか。実は、「ゆったり、のんびり」が高い生産性を生み出すことが、心理実験で分かっています。一見逆説的に思えても、試してみれば納得しますよ。
- 観葉植物を置くとオフィスが活性化する
- 職場のメンテナンスを行うと社員力がアップする
- 雑談が新しい仕事を呼び込む
- 休憩をこまめにとるほど集中力がアップする
- 効率よく働くことに固執してない?
観葉植物を置くとオフィスが活性化する
エクセター大学のクリス博士らは、職場に観葉植物を置く心理実験を行いました。大規模オフィスの一平方メートルごとにグリーンを置いて、職場の全員が机から植物を見られるよう工夫し、生産性がどれだけ変わるかを見たのです。
10年にわたる研究の結果、観葉植物を置いたほうが、置かないときよりも生産性が15%も向上することがわかりました。さらに社員の幸福度や、新しいアイディアを生み出す確率などもアップしたとのこと。
緑がもたらす癒し効果が社員のストレスを減少させ、集中力を向上させたのではないかと推測されています。グリーンを一つ持ち込むことで生産性が上がるなら、試してみたいですね。もちろん大きな観葉植物でなくても、各々がデスクで愛でられるような小さい鉢植えでも効果があるでしょう。
職場のメンテナンスを行うと社員力がアップする
忙しいからと、社内の美化をおろそかにしていませんか。気づいたら壁はよごれ、トイレも汚い、床にはゴミが……といった環境では、生産性は上がりません。
一つ修繕の行き届いていない場所があると、あとは坂を滑り落ちるようにどんどんその場が荒れていってしまうことは「割れ窓理論」といわれています。割れた窓ひとつをそのままにしておくだけで、「この場は窓が割れていても気にしなくていいのだ」という心理が働き、ゴミが道端に散らかったり、壁に落書きがされたりして、あっという間にスラムへ転落してしまうのです。荒れた環境は住んでいる人の心にも影響し、すさんでいきます。
生産性を上げたいなら、まずはきれいな環境を心がけましょう。一分でも惜しいと感じるかもしれませんが、それでも朝の5分を使って美化運動を社員全員で行い、行き届かない壁や窓の修繕はメンテナンス業者に依頼しましょう。きれいな環境が用意されれば、社員も生き生きと働けるようになるでしょう。
雑談が新しい仕事を呼び込む
日立製作所のフェローでビックデータ解析の権威でもある矢野和男氏は、休憩所で会話が活発になされた日ほど仕事の受注率が高いことに注目し、ある実験を行いました。同世代の4人のチームで休憩をとってもらい、わざと雑談を活性化させたのです。結果、休憩中の活発度は10%以上向上し、受注率が13%向上したといいます。
会話を増やすことで脳内が活性化され、その結果、生産性もアップしたのではないかと考えられます。雑談をしていると「ああ、この時間がもったいない」と感じることがあるかもしれませんが、実は仕事に不可欠なエッセンスなのかもしれませんよ。
休憩をこまめにとるほど集中力がアップする
イタリアのフランチェスコ・シリロは、短い作業と短い休憩を繰り返すことが仕事効率をアップさせることに気づき、その時間術に「ポモドーロ・テクニック」と名付けました。25分の作業と5分の休憩を「1ポモドーロ」とし、4ポモドーロごとに30分の休憩をとるのです。
25分で一区切りさせようと思えば集中力が高まりますし、ちょうど集中力が途切れてきたころに休憩があるため、そこで充電することができます。次第に「25分あれば、これだけ仕事をすることができる」と仕事量を把握することにもつながります。
1時間、2時間と連続してパソコンにしがみつき、かえって仕事がはかどらないという人は、ぜひポモドーロ・テクニックを試してみてください。
効率よく働くことに固執してない?
以上、一見して「ゆったり、のんびり」に見えることが、実は生産性アップにつながるという事例をお伝えしました。欲張って働きがち、焦りがちという人ほど、意識して「ゆったり、のんびり」を心がけてみましょう。かえって仕事が進むことに驚かされますよ。
参考:『ココロの謎が解ける50の心理実験』(王様文庫)p.208
『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』 (草思社文庫)