近年の研究では、スケジュール管理の仕方に2つのタイプがあることがわかっています。自分のタイプをつかむとともに、タスクの内容に合わせてスケジュール管理の方法を選択することで、より充実した人生が送れるそうですよ!
- 体感なのか、時間なのか
- 「イベントタイマー」タイプの特徴と対策法
- 「クロックタイマー」タイプの特徴と幸福度
- 時を忘れる体験を
体感なのか、時間なのか
スケジュール管理能力は、さまざまな場面で必要になります。仕事はもちろんのこと、家庭生活でも子どもの送り迎えや夕食の時間なども決まった時間に終えなければいけません。物事のほとんどは締め切りが決まっているため、多くの人はそれに合わせて計画を立てています。その一方で、どうも計画通りにいかないと感じている人も多いのではないでしょうか。それはスケジュール管理に関する自分のタイプを知らないからかもしれません。
さて、あなたは休日の起床時間や昼食の時間が決まっていますか?
旅行の計画を立てるときに、しっかりとタイムスケジュールを組む方ですか?
どちらの質問にも「はい」と答えたあなたは「クロックタイマー」タイプで、「いいえ」と答えた人は「イベントタイマー」タイプの可能性が高いようです。
ヤシェーバー大学のタマール・アヴネット教授は、スケジュール管理には2つのタイプがあり、人はどちらかのタイプを選択していると説明しています。一つは時間でスケジュールを立てる「クロックタイマー」タイプで、もう一つが時間に縛られず自分の体感に合わせてスケジュールをこなす「イベントタイマー」タイプです。
この2つのタイプは、幼児のときから傾向性が表れているそうです。その判別方法として、タマール・アヴネット教授は「昼食を食べる?」という質問を紹介しています。この質問に「何時?」と尋ねるようなら「クロックタイマー」タイプ、「まだお腹はすいてない」あるいは「お腹すいた」と答えるなら「イベントタイマー」タイプというわけです。
「イベントタイマー」タイプの特徴と対策法
「イベントタイマー」の人は、体感によってスケジュールをこなしていくので、自分が納得しないと、タスクを終えることができません。
極端な話、出社時間になっても朝食が食べ終わっていなければ、出かけることができないのです。時間がないから朝食は抜こうといった判断が難しくなります。
このような傾向性は、仕事では問題となることが多いでしょう。時間に合わせて仕事の精度を調整できないからです。気になってしまうと締め切りに関係なく時間をかけてしまいがちです。
この対策として重要なのは、「イベントタイマー」の気質が影響しやすいタスクと、あまり影響しないタスクに分けて、影響しないタスクから終わらせることです。そうすれば、こだわって時間がかかってしまいがちなタスクにたっぷり時間を使うことができます。
例えば、書類作成に時間をかけてしまうなら、それ以外の仕事を手早く終わらせるようにします。料理に時間をかけてしまうようならほかの雑用を先に片付けて、夕食の開始時間をフレキシブルにしてみるのもいいでしょう。生活の一部でも自分が納得するまで時間をかけられるよう、日々のスケジュールを見直すと、これまでよりスムーズに動ける可能性があります。
「クロックタイマー」タイプの特徴と幸福度
では、スケジュール通りに動ける「クロックタイマー」の人は、スケジュール管理を見直す必要がないのでしょうか? じつはタマール・アヴネット教授の研究は、「クロックタイマー」の人こそ知っておくべき内容なのです。
ホットヨガのレッスンを使った心理実験では、片方の教室に時計を置き、ヨガのポースを維持する時間をインストラクターから指示するようにしました。もう一方のクラスでは時計を置かず、ポーズの終了の合図はインストラクターの感覚に任せました。
結果、時間で生徒を管理したクラスは、指導者が体感で指示したときと比べて、ポーズを維持できなくて座り込んでしまったりする人が多く、レッスンの満足度も低いことがわかりました。
上記も含めた各種調査によって、「クロックタイマー」タイプは「イベントタイマー」タイプと比べて、次の3つの特徴があることがわかっています。
①自分の生活をコントロールできないと感じることが多い
②前向きな気持ちに乏しい
③爆発的な成長の機会が少ない
どうも「クロックタイマー」タイプは体感より時間を重視した結果、「イベントタイマー」タイプより幸福度が下がる傾向にあるようなのです。
時を忘れる体験を
「クロックタイマー」の最大の利点は、標準化されたタスクを共同でスムーズに行えること。仕事は各プロジェクトに複数の人がかかわるため、滞りなく仕事を終わらせるには時間を守る必要があります。ただ、それは決まったものを、決まった時間内で処理する場合です。イノベーションが必要な仕事では、各人が満足するまでタスクに向き合う方が有効なようです。
例えば、アップルの創設者であるスティーブ・ジョブズは、新製品の開発スケジュールを気にすることなく、開発者が満足するまで開発させた人として知られています。つまり「イベントタイマー」気質だったのです。
アップルの開発は特別だと考えがちですが、米国では少しずつ「イベントタイマー」的な仕事へと管理方法を変えているという報道もあります。ビジネス環境の変化が速いので、それに対応するためには「イベントタイマー」的に仕事に取組み、爆発的な成長を手にする必要があるからでしょう。
では、ここ日本で「クロックタイマー」タイプは、どのようにスケジュール管理すべきなのでしょうか?
各種の報道では、パートナーや家族との時間、クリエイティブな作業中は時計を外して、思いっきり熱中するよう助言しています。夕食や寝る時間が多少遅くなることを気にせず、満足できるまで時間を費やしてみることで幸福度がアップする可能性があるからです。
特にしっかりと時間通り動けているのに、どうも自分を管理できないと感じる人は、自分を縛っている時間の束縛から抜け出してみるのもいいかもしれません。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:
「So What If the Clock Strikes? Scheduling Style, Control, and Well-Being」(Tamar Avnet Anne-Laure Sellier)/「Avnet’s Research Suggests Online Reviews Impacted by User’s Sense of Time」(Michael Bettencourt/Faculty News Yeshiva University)/「Why Keeping Time