アンチエイジングを気にする人は、以前より多くなっているようです。化粧品やサプリメントも数多く販売されています。しかし老化防止に心理的な作用が大きいことを知っていますか? 心と加齢についてまとめてみました。
- 心理実験で若返りに成功
- 老化のメカニズムは解明されていない
- 美容とファッションに注意
心理実験で若返りに成功
1979年、ハーバード大学のエレン・ランガ―教授がちょっと面白い実験をしました。その名前は「カウンタークロックワイズ研究」。直訳すれば時計の針巻き戻し実験といったところでしょうか。
この実験では、75歳の男性16人を集め、20年前の環境で1週間生活させたのです。家電やインテリアはもちろん、部屋の雑誌や本も20年前のもの。実験参加者は当時を思い出しながら生活しました。その結果、ほとんどの参加者の身体の柔軟性が増し、視力が平均1割改善し、握力も強くなったそうです。つまり若返ったのです。
この実験結果から、老化は肉体以上に思考に支配されているという可能性が生まれたのです。特にランガ―教授は、自分の限界を自らで決めてしまうことが問題なのではと指摘しています。
老化のメカニズムは解明されていない
意外に思うかもしれませんが、老化のメカニズムは完全には解明されていません。遺伝子の影響も25~30%程度と言われており、環境や食生活、心理状況などを含めた生活環境が老化の大きな原因ではないかと注目されています。
日本では寿命が伸び続け、明らかに老化のスピードは遅くなっています。その事実を如実に物語るのが、『サザエさん』の登場人物、磯野波平さんの年齢です。なんとあの容姿で54歳。『サザエさん』の連載が始まったのが、1946年(昭和21年)で、昭和25年の男性の平均寿命が58歳なので老けていても当然なのでしょう。
これぐらいの年齢なら、これぐらい老けていても当然だという意識は加齢を進ませます。「カウンタークロックワイズ研究」では、わずか1週間で視力や握力まで復活していることを思い出してください。自分で描く年齢のイメージが、加齢を呼び寄せる部分もあるのです。
美容とファッションに注意
では、実年齢に意識が引っ張られないようにするためには、どうしたらいいのでしょうか? そのヒントがサントリーウエルネス(株)のまとめた『実感年齢白書 2022』にあります。
この白書によれば、実感年齢が若い人は、そうでない人の1.7倍「鏡で自分をチェックする」そうです。自分の容姿を気にしているからこそ若さを保てるというわけです。
さらに実感年齢を実年齢より若く答えた人たちは、以下の選択肢を最大で2割も多く選んでいるとのこと。
・ファッションは自分の個性を表現するものだと思う
・自分の姿を鏡でよくチェックするほうだ
・髪型にはこだわっている
・自分の素肌に自信がある
・肌つやを気にかけるほうだ
・爪のケアを怠らないほうだ
・同年代と比べて白髪が少ないと思う
美容への意識が高く、しっかりと身体のケアしている人ほど若さを保てる可能性が高いのです。肌つや、髪、爪、ファッションなどに手抜きをせず、労力を傾けてみるのはおすすめです。また若い時に興味のあった趣味を再開してみるのも、時計の針を巻き戻すきっかけになるかもしれません。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『ココロの謎が解ける 50の心理実験』(清田予紀/三笠書房)