出世は人を変える!?知らないうちに性格がゆがむ怖さを心理学で解説

「あいつ、部長になってから人が変わったよな」なんて同期の社員と話し合うことありませんか?では、自分が役職に就いたらどうでしょうか?変わる?変わらない?答えは心理学が押しえてくれます。

  1. 「役職」はどんな人をつくる?
  2. 誰もが嫌な権力者になる
  3. 実験が終わっても権力者の気分に
  4. 出世してイヤな人にならないために

「役職」はどんな人をつくる?

「役職が人をつくる」とはよく言われる言葉です。通常、良い意味で使われることが多いのですが、役職が人を悪く変化させることを心理実験が証明してもいるのです。

友人や家族、自分自身も悪く変わってしまうかもしれない「権力の堕落」と呼ばれる現象について、説明していきましょう。

社会心理学者のデヴィット・キプニスは、大学生と高校生を使い、賃金なども払う擬似的な企業の仕組みをつくって、人が権力を持つとどうなるのかを実験しました。

大学生は4人の高校生を指示・監督して製品を作成します。製造場所は違う建物にあり、製品の原材料は大学生が持っています。高校生の連絡係が原材料を仲間に運び、完成品を大学生に届けるのです。

高校生はイヤホンを付けており、大学生はマイクで一人ひとりに指示を出すことが可能になっています。ただしこのイヤホンは、高校生の声を拾えないので、一方的に指示を出すだけのシステムとなっていました。つまり高校生の意見は、連絡係に託すしかない状況でした。

心理学者は大学生に、この製品製造にかかる平均的な時間を伝え、より効率よく作業を実施し、会社が儲かるように指示を出しました。そして儲かるためには、監督権限を持つ大学生の役割が重要とも伝えたのです。

誰もが嫌な権力者になる

ここまでは実験参加者共通の条件ですが、じつは指示を出す大学生は2グループに分かれていました。「強い権限を持つグループ」と、「弱い権限を持つグループ」です。

「強い権限を持つグループ」は、作業への追加指示、部下の賃金の上下、配置転換や解雇の権限などの権限を与えられていました。一方、「弱い権限を持つグループ」は簡単な作業指示しか権限が与えられていませんでした。

結果、大学生はどのように振る舞ったのかというと、弱い権限の大学生はねばり強く高校生を説得し、より生産性を上げるよう努力しました。一方で強い権限を持つ大学生は、説得することをせず、賞罰や配置転換で高校生を自由に動かそうとしました。さらに解雇を脅しに使って指示・命令を出すなどの行為も目立つようになったというのです。

しかも部下の能力を低く評価し、業績アップは自分のおかげだと高い自己評価を付けたのです。

そして、もう一つ重要なことが、それは強い権限を持たされた大学生の全員が、同様の行動を取ったことです。もちろん権力の怖さを知り、行動を改める機会のない実験なので、同様のことが現実の社会で完全に再現されるわけではないでしょう。

でも権力を持てばイヤな人間になってしまうのは、ある種の決まり切った行動パターンともいえそうです。

実験が終わっても権力者の気分に

さらに追加で、権力者の行動を示す実験を紹介しておきましょう。

実験がすべて終わった後、キプニスは実験にかかわった部下と一緒にコーラを飲んで歓談しましょうと誘ったのです。

結果、弱い権限しか持たない大学生の79%が歓談を希望したのに、強い権限を持った大学生は35%しか歓談への参加を望みませんでした。実験が終わってまで高校生と話し合いたくないと思ったのだそうです。

このとき大学生がとらわれていたのは、権力者としての幻影だったと解説されています。実験で一時的に作り出された権力であっても、それは人間関係に複雑な影を落としてしまうのです。


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出世してイヤな人にならないために

「権力の堕落」に陥るのを防ぐ方法は、どのようなものがあるでしょうか?

まず権力を持てば、誰もが嫌な人間になってしまう行動パターンに陥りやすいのだと気付くことが大切です。知らず知らずのうちに自分だって時間のかかる説得をあきらめ、どこかで部下を脅しているかもしれないのですから。

次に、この実験で強い権限を持った大学生の行動を、反面教師として自らの行動を振り返りましょう。

・賞罰の増減や人事異動の多用

・部下を脅して動かそうする

・部下は使えないと感じる

・業績のほとんどは自分に依るものと感じる

こんな症状が見えてしまったら要注意。

その上、監視を怠れば、部下はサボるというような認識を持つようになってしまったら、組織そのものがどんどん疲弊してしまいます。さらに気付いたら、性格が変わっただけではなく、コーラでの歓談を拒否した大学生のように、自分から部下との接点を無くそうとしていたり……。

そうなってしまうと組織を改めて活性化させることも難しくなってしまいます。

「権力の堕落」は企業にとっても大きなマイナスなのです。

監修:日本産業カウンセラー協会

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